理研基幹研究所 柴田遺伝制御科学研究室
柴田 武彦 上席研究員
テロメアとは、ウイルス以外の生物において、直線状の染色体DNAの末端にある構造です。Arthor Kornberg が最初に発見したDNA複製酵素は、その後見つかったものも全てDNA 合成を始めるためにはRNA のプライマーを必要とします。そのため、DNA の末端は完全な形で複製できないという、the DNA end-replication problem と呼ばれていた問題が、ありました。Elizabeth H. Blackburn , Carol W. Greider, Jack W. Szostak のテロメアとテロメア 合成酵素(テロメラーゼ)の研究は、この問題に終止符を打ったという意義が、先ずあります。
Elizabeth H. Blackburnは、テトラヒメナからテロメアを初めて取り出して、TTGGGGの繰り返し構造を持つことを発見しました(1978)。その頃から、Jack W. Szostakと共同研究を初めて、テトラヒメナのテロメアが出芽酵母の細胞でも機能することを明らかにしました。さらに、Blackburnの学生であった、Carol W. Greiderが、細胞はテロメラーゼという酵素を持ち、通常のDNA合成酵素とは異なり、鋳型なしにテロメアの繰り返し配列を合成、伸長することを発見しました(1985)。J. Szostakは、当時、出芽酵母で、DNAの末端が非常に高い反応性を持ち、組み換えを誘導することに興味を持って研究していました。その結果の1つが、二重鎖切断・修復モデルと呼ばれる相同DNA組換え機構のモデルです。Szostakは、同時期に、Blackburnとの共同研究で、テトラヒメナのテロメアを酵母細胞に導入すると、DNA切断端を保護することを見つけていました。
今回ノーベル賞を取った3人が書いた総説:
E. H. Blackburn and J. W. Szostak: "The molecular structure of centromeres and telomeres.," Annu. Rev. Biochem., 53, 163-194 (1984).