独立行政法人 理化学研究所
慶應義塾大学
理研と慶大のメタボローム研究に関する基本合意書の調印
2005年6月2日

 独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)と慶應義塾大学(安西祐一郎塾長)は、平成17年6月1日、わが国全体の生体内代謝研究の基盤形成に向けて協力することを目的として、「独立行政法人理化学研究所と慶應義塾大学との間におけるメタボローム研究に関する基本合意書」を締結しました。
 「メタボローム」とは、生体内に数千種類存在する代謝物質の総称です。ゲノムやプロテオームに次ぐものとして、ヒトや微生物、植物などのメタボロームを解析することで医療産業や食品産業に大きなインパクトを与えると期待されています。
 現在、理研植物科学研究センター(PSC)は植物を中心としたメタボローム研究基盤を整備中であり、慶大先端生命科学研究所(IAB)は動物・微生物を中心としたメタボローム研究基盤を確立しています。
 今回の合意書の下で、両者はそれぞれの特徴を生かして、今後その優れたメタボローム研究基盤を相互に提供し合い、両機関の共通研究プラットフォームの形成を図り、研究の効率化と協力の相乗効果を実現します。この共通研究プラットフォームを中核として、優れたメタボローム研究基盤を有する他の研究機関との協力関係を構築し、参加機関が相互に研究基盤を提供し合う分散型のオールジャパンの研究プラットフォームの形成を目指します。また、今回の合意を契機として、動物、微生物及び植物の中心代謝(動植物に共有されている基本的な代謝)の中間産物の網羅的分析とその結果を活用した中心代謝メカニズムの解析に関する共同研究を実施することとしています。


1. メタボローム研究の現状
1) 理研の植物を中心としたメタボローム研究について
理研植物科学研究センター(篠崎一雄センター長)では、平成12年度からの5年間の第一期プロジェクトを土台に平成17年度から第二期プロジェクトをスタートした。第二期ではメタボローム解析を核とし、植物の生産力の質的および量的な向上を目指した遺伝子機能の解明と応用を進めている。さらに植物メタボローム解析の世界標準となるプラットフォーム基盤を構築し、LC-MS, GC-MS, CE-MS, NMRなど複数の分析技術を有機的に組み合わせたメタボローム解析の先端的技術開発とハイスループット解析を実現する(斉藤和季メタボローム基盤研究グループディレクター)。
特に、多次元NMR技術は理研がたんぱく質構造決定で開発した新規技術を用いてメタボローム研究に応用し、研究実績を上げているので、オリジナリティーのある研究技術となっている。また、理研植物研究グループに伝統的に強力な植物ホルモン分析を基にした微量分析技術を導入することにより、ホルモノーム研究を推進している(神谷勇治生長制御研究グループディレクター)。
さらに理研において開発・作製した、アクティベーションタグライン、完全長cDNA過剰発現ライン、挿入型変異ラインなど充実したリソースを材料にメタボロームとトランスクリプトームを中心とした網羅的解析を統合し、植物の質的・量的向上に資する新規遺伝子機能を探索する。これらの理研が有する豊富なゲノム関連リソースは理研の優位性を高めている。さらに、バイオインフォマティクを強化してシステム生物学への展開を目指す。
植物科学研究センター http://www.psc.riken.go.jp/
2) 慶大の動物・微生物を中心としたメタボローム研究について
慶應義塾大学先端生命科学研究所(冨田勝所長)はキャピラリー電気泳動装置(CE)と質量分析装置(MS)を組み合わせたメタボローム解析技術を、曽我朋義助教授が中心になって開発してきた。この技術で平成14年8月に特許を取得し(特許第3341765号 陰イオン性化合物の分離分析方法及び装置)、平成15年7月には第17回独創性を拓く先端技術大賞の日本工業新聞社賞を受賞した。
またこれらの大量の生物データから代謝のしくみを解析するためにはインフォマティクス技術が不可欠であるが、先端生命科学研究所は細胞シミュレーションの分野で世界的パイオニア。同研究所のE-CELLシステムは平成15年年11月に、世界の卓越した研究室に送られるIBM Shared University Researchアワードを受賞した。
平成15年7月にはベンチャー会社「ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社(HMT社)」を設立。現在、複数の大手食品会社や製薬会社と契約している。
また教育面では、メタボローム解析実習、ゲノムシーケンス実習、プロテオーム解析実習、バイオシミュレーション実習、ゲノム解析プログラミング、などの最先端の実習科目を揃え、実験生物学とバイオインフォマティクスの両方をバランスよく理解したシステム生物学の人材育成に貢献している。
先端生命科学研究所 http://www.iab.keio.ac.jp
HMT社 http://humanmetabolome.com
大学院プログラム http://www.ttck.keio.ac.jp/Bioinformatics-program/
E-Cellプロジェクト http://www.e-cell.org/


2. 研究協力の概要
1) 共同研究の内容
動物、微生物(主として慶大IAB担当)及び植物(主として理研PSC担当)の中心代謝(動植物に共有されている基本的な代謝)の中間産物のメタボリックプロファイリング(全要素分析)及び分析結果を活用した中心代謝メカニズムのインフォマティックス的手法による解析を行う。
2) 共同研究の体制
理研は、IABのバイオラボ棟に隣接したエリアに山形県鶴岡市が整備するメタボローム棟に、CE-TOFMS(キャピラリ電気泳動(Capillary Electrophoreseis)と飛行時間質量分析計(Time of Flight Mass Spectrometry)の組み合わせ)を中心とした分析機器を整備し、必要な研究員、テクニカルスタッフ、ポスドクを配置して共同研究を実施します。慶大は、共同研究に必要なメタボローム分析機器、インフォマティックス用サーバーの能力を提供します。共同研究を円滑に進めるため、参加する研究者に対して相互に身分を付与します。


3. 今後の課題
1) メタボローム研究のオールジャパンのプラットフォーム形成
理研は、今回の慶大との共同研究を契機として、優れたメタボローム研究基盤を有する研究機関(かずさDNA研究所、千葉大等)と共同研究契約を締結して、わが国のメタボローム研究のハブとなります。これを足場として、相互に研究基盤を提供し合う分散型のプラットフォーム実現の核としての役割を担います。


(問い合わせ先)

独立行政法人理化学研究所
  経営企画部 部長  中西  章

Tel: 048-467-9248 / Fax: 048-462-4600

(報道担当)

独立行政法人理化学研究所 広報室

Tel: 048-467-9272 / Fax: 048-462-4715
Mail: koho@riken.jp
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