プレスリリース 独立行政法人 理化学研究所
米国「ENCODE計画」に
遺伝子構造・機能研究グループが独自の技術で貢献
平成19年6月14日
 米国を中心とするENCODE(Encyclopedia Of the Human DNA Elements)コンソーシアムは、2003年にはじまったENCODE計画のパイロットプロジェクトの成果をまとめ、科学誌ネイチャー(6月14日号)に発表しました。理化学研究所ゲノム科学総合研究センター 遺伝子構造・機能研究グループ(林崎良英プロジェクトディレクター)は、独自に開発したCAGEデータ※1を提供することにより、本プロジェクトに貢献しています。

 ENCODE(エンコード)計画は、ポストゲノム戦略として米国で立ち上げられたプロジェクトです。米国NIH(衛生研究所)の国立ヒトゲノム解析研究所(National Human Genome Research Institute)を中心として、2003年9月から正式に開始されました。"ENCODE"とは、Encyclopedia of Human DNA Elements(ヒトDNAの百科事典)から命名されており、完全解読されたヒトゲノム上に、遺伝子の機能を担う領域を全て書き込んで、全ヒトゲノム(DNA)の百科事典を作成することを目指した計画です。

 今回のENCODE計画のパイロットプロジェクトでは、ヒトゲノムの1%にあたる部分から、人の病気や生物学的に関連性のある44の領域をあらかじめ選び、プロモーター配列※2、制御領域、およびゲノムDNAに結合するタンパク質因子の同定などの集中的解析を行いました。その中で、CAGEデータは、様々な生命現象におけるプロモーター配列の使われ方の違いを解析するために活用されました。
 今回の論文で興味深いのは、ヒトゲノムの大部分の領域が一度はRNAに転写されており、そのゲノム領域が93%に上ることが明らかになったことです。また、新たに同定したRNAのほとんどは、タンパク質をコードしていない可能性が高いことも示しています。
 さらに、プロジェクトでは転写開始サイトおよび転写因子に関連するヒストンタンパク質の修飾のマップを作成し、これを用いて転写開始サイト周辺のゲノムに結合するタンパク質の解析などを行いました。

 研究グループはFANTOM※3/ゲノムネットワークプロジェクトによるゲノムワイドな解析の成果として、これまでに以下のような研究成果を発表してきました。
(1) 従来ゲノムの98%はジャンクとされてきたのに対し、ゲノムの70%以上がRNAに転写されていることを示した。(2005年サイエンス誌に発表)
(2) タンパク質をコードしないRNA(non-coding RNA; ncRNA)は、全RNAの半分以上を占めていることを明らかにし、タンパク質に匹敵する広大な研究領域「RNA大陸」を発見した。(2005年サイエンス誌に発表)
2005年9月2日プレスリリース
(3) マウス及びヒトのプロモーター配列の初の大規模マップを作成(2006年ネイチャー・ジェネティクス誌)
2006年4月29日プレスリリース

 今回ネイチャー誌に発表された論文は、理研グループのパイオニアとしての役割を改めて実証し、また広げていくものだと言えるでしょう。


< 問い合わせ先・報道担当 >
(問い合わせ先)

独立行政法人理化学研究所
 ゲノム科学総合研究センター 遺伝子構造・機能研究グループ
  プロジェクトディレクター 林崎 良英(はやしざき よしひで)

Tel: 045-503-9222 / Fax: 045-503-9216
 横浜研究推進部 企画課

Tel: 045-503-9117 / Fax: 045-503-9113

(報道担当)

独立行政法人理化学研究所 広報室 報道担当

Tel: 048-467-9272 / Fax: 048-462-4715
Mail: koho@riken.jp


<補足説明>
※1 CAGE (Cap Analysis of Gene Expression)
耐熱性逆転写酵素やcap-trapper法を組み合わせて転写物の5'末端から20塩基のタグ配列を切り出し、塩基配列を決定する実験技法。
※2 プロモーター配列
転写開始を促す活性を持つDNA上の特定の領域・塩基配列のこと。
※3 FANTOM (Functional Annotation of Mouse cDAN)
理研が中心となって結成された哺乳動物(マウス)の遺伝子を網羅的に機能注釈することを主眼とする国際的研究コンソーシアム共同集団(Functional ANnoTation Of Mouse cDNA)の略称。オーストラリア、シンガポール、スウェーデン、南アフリカ、イタリア、ドイツ、ギリシャ、スイス、英国、米国などを含む全世界の11ヶ国/45ヶ所の研究機関等が参加している。

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