プレスリリース 独立行政法人 理化学研究所
抗体を産生するB細胞の「成熟」に重要な濾胞樹状細胞の前駆細胞を発見
平成19年5月24日
 独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、抗体の「成熟」反応において中心的な役割を果たす濾胞樹状細胞の前駆細胞が存在することを発見し、取り出すことに成功しました。免疫・アレルギー科学総合研究センター(谷口克センター長)免疫系構築研究チームの大野博司チームリーダーおよび村上貴哉研究員らによる成果です。本研究の主要な部分は、米国の科学雑誌『Blood』のオンライン(平成19年5月22日付け)に掲載されました。


< 濾胞樹状細胞とは >
     細菌などの病原体が身体に侵入してくると、免疫系がそれを異物(抗原)として認識・排除するための様々な反応を発動します。B細胞による抗体の産生はその重要な反応のひとつです。異物の抗原を効率的に排除するためには、抗原に対する抗体の親和性を高めたり、抗体にクラススイッチという現象を誘導して、それぞれの抗原により適した抗体を作り出す必要があります。
 このような、いわば抗体の「成熟」反応は、脾臓やリンパ節などの免疫組織内に存在するB細胞の集団であるリンパ濾胞で行われます。濾胞樹状細胞はこのリンパ濾胞内の胚中心と呼ばれる部位に見出され、B細胞に直接働きかけて抗体の成熟に中心的役割を果たすとともに、リンパ濾胞の形成にも重要な細胞ですが、その起源は不明でした。


< 成果と今後の期待 >
     研究チームは、マウスの脾臓細胞を細かく分類することにより、その中にごく少数の濾胞樹状細胞の前駆細胞が存在することを発見し、取り出すことに成功しました(図;左)。この前駆細胞を別のマウスの血管内に投与すると前駆細胞は脾臓に定着して、そこにリンパ濾胞が形成されることがわかりました。また、この前駆細胞をマウス皮内に投与すると、前駆細胞はその部位に留まり、本来リンパ濾胞が見られる免疫組織ではないにもかかわらず新たにリンパ濾胞様の構造を構築することを見出しました(図;中、右)。
 前駆細胞によってリンパ濾胞の形成を誘導すると抗体の産生も高まることから、この細胞の投与により免疫応答を人為的に増強することができると、将来的には感染症や免疫不全症などへの応用も期待できます。


(問い合わせ先)

独立行政法人理化学研究所
 免疫・アレルギー科学総合研究センター
 免疫系構築研究チーム
  チームリーダー  大野 博司(おおの ひろし)
  研究員  村上 貴哉(むらかみ たかや)

Tel: 045-503-7031 / Fax: 045-503-7030
 横浜研究推進部 企画課

Tel: 045-503-9117 / Fax: 045-503-9113

(報道担当)

独立行政法人理化学研究所 広報室 報道担当

Tel: 048-467-9272 / Fax: 048-462-4715
Mail: koho@riken.jp


図 濾胞樹状細胞の前駆細胞とマウス皮内に形成されたリンパ濾胞様構造およびその染色断面
(左) 取り出した濾胞樹状細胞の前駆細胞。細胞から枝状の突起が伸びているのがわかる。
(中) 前駆細胞の投与により、マウス皮内に形成されたリンパ濾胞様構造。(右)リンパ濾胞様構造を輪切りにし、B細胞を緑に染色した像。4つのリンパ濾胞が見られる。

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