| ※1 |
イメージとしては、プロペラが回っていると円板のように見えて、羽根の向きを問う意味がなくなるのと似ています。電子の磁石の上下2つの向きを「男女」にたとえれば、単独でいるときは男女の区別がつくのに、「夫婦」の対になるとどちらが「妻」でどちらが「夫」なのか、常に入れ替わっていてわからないが、片方が「妻」なら必ず他方は「夫」である、という不思議な状態です。 |
|
| ※2 |
水やアミノ酸などふつうの分子が電子を含んでいるのに磁石にならないのは、電子が融合して対になっているからです。 |
|
| ※3 |
この対の中で電子2個が「絡み合った状態」は、最近では量子コンピューターの高速計算原理としても着目されています。電子の対を人工的につくらせたり制御したりすることは、次世代電子技術の基盤でもあるのです。 |
|
| ※4 |
磁石(強磁性体)をつくるためには、さらにそれぞれの電子の磁石が同じ向きにそろうようにしなければなりません。ちなみに、そのやり方を突き詰めて、有機分子でも極低温で磁石になることを、当グループの田村らが世界で初めて東京大学物性研究所で1991年に発見しています。 |
|
| ※5 |
実際の物質では、そういう分子の並びがたくさん束になったような構造をもつので、1列だけとりだしているわけではありません。 |
|
| ※6 |
この変化を研究者はスピン-パイエルス転移と呼んでいます。スピン-パイエルス転移は1970年代に発見されて以来、現在まで研究されています。 |
|
| ※7 |
今から20年前に発見されて人々を驚かせた銅酸化物の高温超伝導体はこれにとても近い状況にありますが、不対電子が一部失われているので、その空白を埋めるようにして電子が移動できる点で違っています。超伝導も電子の対が低温で引き起こす現象であることから、この問題は多数の物理学者の注目を集めてきました。また、2000年に白川博士らがノーベル賞を受賞した研究の導電性プラスチックは、一次元磁性体から不対電子の数が少しずれて移動性が現れたものともいえます。 |
|
| ※8 |
高温超伝導体もこのタイプに近いものです。 |
|
| ※9 |
分子が二次元の層状に並んだ構造をもつものとして活発に研究されてきたものに、有機導体という物質群があります。2000年に白川博士らがノーベル賞を受賞した研究の導電性プラスチック(導電性高分子)と違って、分子が1つ1つ独立した結晶性の固体になっています。固体の中で分子から分子へと電子が移動することによって、金属のように電流を通したり、種類によっては低温で超伝導になったりします。固体になったときの電流の運び手として、不対電子を乗せた有機分子を主成分にしてつくられます。それら分子は結晶の中で互いに接するようにして層をつくります。層の中で分子と分子の接触を通じて電子が移動できれば、ひとまず有機導体のできあがりです。ところが分子間の接触が弱いと、分子の上に不対電子が乗ったまま動きにくい状態になり、導体よりむしろ磁性体になります。 |
|
| ※10 |
「隣人関係」をもとに集団全体で秩序をつくろうとしてもどこかに不都合や不満足ができてしまうことを、欲求不満(フラストレーション)にたとえたことばです。あちらを立てればこちらが立たず...人間の「三角関係」にもどこか似ています。 |
|
| ※11 |
三角形でいえば、3辺のうちのどれに沿って対ができるかという選択の問題です。 |
|
| ※12 |
一見すると三角構造に見えても、本当にフラストレーションがあるかどうかは、実験でたしかめる必要があります。実はこのテストに合格する物質は、有機物質以外まで見渡してもめったにありません。 |
|
| ※13 |
その過程を詳しく見ると、不対電子がまったくバラバラの状態から突然に電子対ができて整列したのではなく、少しずつ連続的に電子対が定着していったことがわかります。これも今回の発見した現象の特徴で、25Kより少し高温でも、電子対がある程度は存在していて、まだ定着できないでいることを示唆しています。電子対が定着していないとは、対をつくる相手を別の電子に切り替えることを繰り返していることであり、対になりそこなってあぶれた不対電子がところどころに生じたり消えたりしながら混じっている状態です。この不対電子がフラストレーションを感じながら磁気を発生しているのが、25Kより少し高温での状態であると考えられます。 |
|
| ※14 |
三角構造の二次元磁性体で電子対が整列した状態が存在するであろうという理論的提案が以前からありましたが、それを実現するには、今回の発見が示しているように分子間距離の伸び縮みが必要だと考えられます。有機分子の結晶の特徴が、それを可能にしているのです。 |