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非磁性体中を流れる磁気の向きを外部磁場で一斉に1回転

−純スピン流を用いた省電力電子素子の開発に道筋−

平成24年9月4日

新しいスピン蓄積素子と従来のスピン蓄積素子

電子が持つスピン(磁石としての性質)を積極的に利用したデバイスの開発が進んでいます。こうした技術分野はスピントロニクスと呼ばれ、ハードディスクドライブ(HDD)の再生ヘッドや磁気メモリーなどに応用されています。ただ現状は、電荷の流れ(電流)とスピンの流れ(純スピン流)の両方を合わせたスピン偏極電流を利用しています。電流が流れると発熱してエネルギーを損失するため、スピンだけが流れる「純スピン流」を用いると素子の省電力化が期待できます。しかし、純スピン流の伝導特性は解明されておらず、半導体素子のようにうまく電子を制御できませんでした。

基幹研究所の研究チームは2011年に、強磁性体のパーマロイ(鉄とニッケルの合金)と非磁性体の銀との間に酸化マグネシウム層を挟んだ「スピン蓄積素子」を作製、出力信号の大幅な向上に成功しました。今回は、この技術をベースにさらなる純スピン流の生成効率と出力信号の向上を目指し、新しいスピン蓄積素子の開発に取り組みました。その結果、生成効率と出力信号は3.2倍に向上、世界最高の出力信号を実現しました。また、長距離(10μm)にわたってスピンが伝搬する現象を観測し、外部からの磁場でスピンの向きを制御することにも成功しました。さらに、純スピン流の拡散距離が長くなるほどスピンの伝搬時間のバラつきが小さくなり、銀の中を流れるスピンは外部磁場で一斉に回転することも発見しました。

今後、非磁性体中を流れるスピンに有効な磁場を与える手法を開発し、外部信号による出力信号の制御が可能になると、従来の半導体技術を上回る省電力・高速動作のスピントランジスタやスピン演算素子の実現が期待できます。


[発表者]
基幹研究所 量子ナノ磁性研究チームの大谷義近チームリーダー(東京大学物性研究所教授)、福間康裕客員研究員(九州工業大学若手研究者フロンティア研究アカデミー准教授)、井土宏研修生(東京大学大学院新領域創成科学研究科博士後期課程)ら