もう1つの現実を体験する「代替現実システム」を開発
−全く新しいインタラクティブメディア体験システムの登場−
平成24年6月21日
アメリカ映画の「マトリックス」では、コンピュータが作った仮想現実の世界でキアヌ・リーブス演じる主人公が人工知能と戦います。現実と仮想の世界…。私たちは目の前の現実を確かなものとして強く信じる一方、「夢」を見ている時のように、全く現実とかけ離れていてもそれを現実だと思い続けることもあります。
こういった体験のときに生じる心の動きや思考を調べることは、ヒトの高次認知機能を理解する上で重要だと考えられています。しかし、そのための実験手法は限られていました。
研究チームは、被験者に気づかれずに、予め用意した過去の映像を “現実”に差し替える「代替現実(Substitutional Reality; SR)システム」を開発しました。SRシステムでは、被験者はヘッドマウントディスプレー(HMD)とヘッドフォンを装着し、2種類のシーンを体験します。1つは、HMD上に取り付けられたカメラからリアルタイムで送られたライブ映像、もう1つは被験者がいる場所で予め撮影され、編集された過去映像です。これらの映像の切り替えに工夫を凝らすことで、被験者に、過去映像を、まるで目の前で起きている“現実”だと体験させることに成功しました。
SRシステムは、予め記録し編集しておいた過去の出来事を、今まさに目の前で起きている現実であると被験者に信じさせることも、それに疑いをもたせることも可能にします。本システムを用いることにより、これまで技術的に困難だった認知・心理実験が可能になります。また、新しいアプローチの心理療法としての応用や、バーチャルリアリティや拡張現実とは異なる体験を提供するヒューマンインターフェースとしての展開も期待できます。