免疫系細胞が刺激に応答し動く仕組みを原子レベルで解明
−DOCK2とELMO1が結合して抑制を解き、互いの機能を発揮−
一人ではなかなか上手くいかないけれど、二人で力を合わせて初めて出来ることってありますよね。お互いを励ましあい、そして、助け合うことができれば、可能性はどんどん広がります。皆さんにも、そんな経験、ありませんか?
感染から身体を守る免疫の世界でもそんな関係があります。免疫系の細胞に出現して免疫の反応をコントロールするカギと目されているタンパク質「DOCK2」と、その結合タンパク質「ELMO1」の関係がそれです。この2つのタンパク質は、それぞれ単独では機能せず、免疫系細胞を活性化する必要が生じると複合体を形成し、初めて働くようになります。しかし、どうしてELMO1がないとDOCK2が機能を発揮できないのかなど、詳しいメカニズムは分かっていませんでした。
このため、理研と九州大学の研究者は共同で DOCK2とELMO1の複合体の構造解析に取り組みました。大型放射光施設SPing-8などを利用してX線結晶構造解析を行い、複合体の立体構造を決定しました。その結果、2つのタンパク質が密接に結合することでお互いの「自己抑制」を解除し合い、それぞれ本来の機能を発揮できる状態に移行させていることが明らかになりました。
単体のDOCK2は折り畳まれた形で存在し機能を自己抑制しており、単体のELMO1もやはり折り畳まれた形で自己抑制していました。 これらDOCK2とELMO1が複合体を形成すると、それぞれの折り畳まれた形の形成を担っていた部分が複合体結合部分となって折り畳みを解き、DOCK2がRacというタンパク質を活性化してシグナルが伝達されて免疫系細胞を活性化させる、という一連の分子メカニズムが解明されました。
この成果は、自己免疫疾患や移植片拒絶などの免疫疾患に対応した新しいアプローチによる治療薬、予防薬の開発につながっていくと期待されます。
生命分子システム基盤研究領域 横山茂之領域長、白水美香子上級研究員、新野睦子上級研究員、塙(末次)京子研究員/九州大学生体防御医学研究所 福井宣規教授、錦見昭彦助教、神田大輔教授らの共同研究グループ