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プロトンの通り道から呼吸酵素の起源にせまる

−立体構造比較から呼吸酵素の分子進化を推測可能に−

平成24年1月23日

真冬の朝。冷たい空気を思いっきり深呼吸すると気持ちいいですね。気持ちがシャキンとしてエネルギーがみなぎります。普段何気なく行っている呼吸にも、生物がたどってきた進化のドラマがあるんだってご存知でしたか?

私たち人間をはじめ生物の多くは呼吸をして酸素を体内に取り入れて生きています。ところが大昔の生物は酸素を使わず、窒素や硫黄の化合物を利用してエネルギーを作り出していました。原始地球の大気環境が劇的に変化するとともに、生物たちは生き残りをかけて呼吸の仕組みを変化させてきたのです。

酸素を用いた好気呼吸は、細胞膜内外にプロトン濃度勾配を作り出すプロトンポンプによって効率的にエネルギーを合成することができます。酸素を使わず窒素や硫黄化合物を用いる嫌気呼吸は、エネルギー合成効率が悪く、進化の過程のなかでプロトンポンプ機能を獲得したことが生物進化の基礎になったと考えられます。では どうやってプロトンポンプ機能を獲得したのでしょうか?

今回、研究グループは、嫌気呼吸で働く一酸化窒素還元酵素NORの一種であるqNORのX線結晶構造解析を行い、 好気呼吸で働く呼吸酵素や他のNORと比較することでその分子進化の道筋の一端を突きとめることができました。 qNORには COXにおけるプロトンポンプの原型ともいえる「試作品」が存在することが明らかになったのです。これまで、分子進化の予測は、アミノ酸配列の比較で行っていましたが、このように立体構造比較が可能になったことで、より詳しく予測ができるようになりました。さらに呼吸酵素の分子進化の理解を深めることでタンパク質の高機能を模倣した人工分子の設計指針の可能性も期待できます。私たちがたどってきた道が未来のヒントになるかもしれませんね。


[発表者]
放射光科学総合研究センター:城宜嗣主任研究員
基幹研究所:杉田有治准主任研究員