嗅覚神経細胞分化の新たなメカニズムの一端を解明
−エピジェネティクスに基づく細胞分化の制御が明らかに−
平成23年12月26日
運命とは、「人間の意志にかかわりなく、身の上にめぐってくる吉凶禍福(広辞苑)」とあります。それでも私たちは、年末年始になると神に祈ったり、仏さまに願をかけたりします。運を呼び込もうってことですね。一方、私たちを構成する細胞は、たった1個の受精卵が運命に導かれ、分化して生み出されてきました。これらはどういう運命に導かれたのでしょうか。細胞の「運命決定」のプロセスは詳しくは分かっていません。
そこで、鼻の奥にある嗅覚神経細胞が生み出される仕組みの解明を通じて、細胞の運命決定メカニズムを知ろうと試みたのは、脳科学総合研究センターと東京大学分子細胞生物学研究所の研究者たちです。これが分かれば、話題のiPS細胞をはじめとする幹細胞の「運命決定」についても理解がより深まるからです。
研究者らは、モデル動物であるショウジョウバエを使って研究に取り組みました。まず、親細胞から生まれた2つの娘細胞を調べると、嗅覚神経細胞の分化を促す「Notchシグナル」が、一方でのみ活性化していることを見つけました。さらに、「Hamlet」と呼ばれる核内因子が、分化の段階に応じて、Notchシグナルが標的にしている遺伝子の発現をダイナミックに調節すること、その結果、それぞれ異なる細胞運命を生み出している可能性があることを示しました。そのメカニズムは、塩基配列に依存せずに遺伝子の発現を制御する「エピジェネティクス」によることも明らかにしました。「HamletがエピジェネティクスによりNotchシグナルを制御する」という発見は、幹細胞の運命決定機構の理解を大きく前進させるものとなります。