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遺伝子の「使用禁止マーク」を外す仕組みが明らかに

−マークを区別して遺伝子をオンにするタンパク質「UTX」の立体構造を解明−

平成23年10月14日

図 UTXとヒストンH3が結合した立体構造

私たちヒトを含む多細胞生物は、文字通り、非常に多くの細胞で成り立っています。これらの細胞は、ほぼ共通のDNA配列を持っていながら、適切な時期に、適切な遺伝子だけを働かせることにより、異なった機能を発揮しています。この遺伝子のオン/オフは、遺伝子やタンパク質に化学的な「マーク」をつけることで、厳密に制御されています。中でも、DNAが巻きついている球状のタンパク質「ヒストンH3」の27番目のリジン残基(リジン27)にメチル基が付くと、「この遺伝子を働かせてはいけない」という「使用禁止マーク」になります。そしていよいよ「この遺伝子を働かせよ」という際には、タンパク質「UTX」が使用禁止マークだけを外して、遺伝子をオンの状態にします。それでは、このUTXは一体どうやって使用禁止マークと他の意味を持つマークを区別しているのでしょうか?

生命分子システム基盤研究領域の研究グループは、UTXとヒストンH3が結合した立体構造の解析から、UTXがマークを区別する仕組みを解明しようと挑みました。X線結晶構造解析の結果、UTXには「触媒ドメイン」と「固有ドメイン」という2つのまとまった立体構造があり、触媒ドメインはリジン27周辺の領域と、固有ドメインはそれより少し離れた領域とぴったりと結合することが分かりました。つまり、これら2つのドメインがそろったときに初めて、触媒ドメインはメチル基だけをリジン27から外し、働くべき遺伝子をオンの状態に導くことを突き止めました。今回の成果は、UTXが細胞分化プロセスを制御する仕組みの理解に役立ちます。また立体構造が明らかになったことで、UTXの阻害剤をデザインする試みも可能となり、細胞分化を人工的に制御する薬剤の開発につながると期待できます。