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非磁性体(銀)に巨大な磁気を持たせることに成功

−超高感度磁気センサーや大容量不揮発性メモリーの開発に道筋−

平成23年6月13日

現代の情報化社会を支え続けているエレクトロニクスは、電子の電荷を利用しています。しかし、さらなる情報処理の高効率化を目指し、電子のスピンも活用するスピントロニクス技術の実用化が期待されています。特に、磁気の源である電子のスピンは、その緩和時間が電荷の緩和時間より数桁も長いため、スピン流やスピン蓄積を活用すると、エネルギー損失の少ない電子素子の実用化が可能となります。

しかしこれまでの材料では、強磁性体と非磁性体間でスピンの緩和に対する抵抗値(スピン抵抗)の不整合が存在したため、効率よくスピンを注入することができない、という問題を抱えていました。

基幹研究所量子ナノ磁性研究チームは、東京大学、日本原子力研究開発機構、東北大学らの研究グループと協力して、強磁性体であるパーマロイ(鉄とニッケルの合金)と非磁性体である銀との間に、厚さ数ナノメートルの酸化マグネシウム層を挟んだ接合を持つ磁気蓄積素子を作成しました。この素子に400 ℃、40分間の熱処理を施した結果、効率よくスピンを銀の中に注入・蓄積することに成功、従来の出力信号が1 μV(磁気蓄積量にして0.01テスラ程度)だったのに対し、その100倍以上である200 μV以上の出力信号(磁気蓄積量にして2テスラ程度)を得ることに成功しました。これは世界最高の値です。さらに、注入したスピンが銀の中を6 μm以上(アルミニウムに比べ10倍以上)も拡散する様子を観測しただけでなく、スピン拡散伝導モデルとの一致も確認できました。

今後は、材料や素子サイズなどのさらなる最適化や、注入したスピンを外部から制御する手段を開発することで、スピントランジスタやスピン演算素子などの実用化も期待できます。