放線菌による「リベロマイシンA」生合成機序を遺伝子レベルで初めて解明
−トマトエキスが誘導する放線菌遺伝子を探索し判明−
土壌の中には多くの微生物が生育し、さまざまな代謝物を生産しています。その中から私たちは、抗生物質や抗がん物質など有用な生理活性物質を見いだし、活用してきました。しかし、たった1グラムの土壌の中には約1億個の微生物が活動しており、その中から、どの微生物が、どのような有用物質を、どのように生みだしているのかを突き止めることは至難の業です。
基幹研究所ケミカルバイオロジー研究基盤施設の研究チームは、土壌中に存在し、抗生物質の生産微生物として知られる放線菌の仲間が、骨粗しょう症やがんの骨転移を抑える薬の候補として注目されている「リベロマイシンA」を生合成するメカニズムを、遺伝子レベルで初めて解明することに成功しました。
リベロマイシンAには、1つの酸素と5つの炭素からなり、1つの炭素を共有する6員環が2つあります。この環構造はスピロアセタール環と呼ばれ、さまざまな生理活性に重要です。リベロマイシンAの人工合成には、31工程も要する多段階のステップが必要ですが、いったい放線菌はどうやって生合成しているのか、全く分かっていませんでした。
研究チームは、長年の培養経験から、トマトエキスを含む培養液で放線菌を培養すると、リベロマイシンAの生産量が増えることを見いだしていました。そこで、この時発現が誘導される放線菌の遺伝子を探索したところ、合計21個のリベロマイシンA生合成遺伝子を突き止めました。さらに、これらの遺伝子が産出する酵素の機能を解析したところ、スピロアセタール環前駆体と作用するジヒドロキシケトン合成酵素(RevG)と、環の立体構造を制御するスピロアセタール合成酵素(RevJ)という2つの新たな酵素を発見しました。今後は、この薬の種となるスピロアセタール環の生合成メカニズムを応用して、薬の材料となる物質群と酵素を混ぜるだけで、効率的・選択的に有用物質を作り出すことができるようになると期待されます。