2009年新型インフルエンザの遺伝子変異を解析
−新タミフル耐性変異の発見など、インフルエンザ感染対策の基礎情報を提供−
インフルエンザが猛威をふるう冬は過ぎましたが、新型インフルエンザの驚異が無くなったわけではありません。20世紀には、1918年のスペインかぜ、1957年のアジアかぜ、1968年の香港かぜと、100年間に3回の世界的大流行(パンデミック)が起きました。21世紀に入ってすぐの2009年には、メキシコで豚由来の新型インフルエンザが発生し、世界保健機関(WHO)はパンデミックを宣言、このウイルスを「2009 pandemic A/H1N1」と命名しました。インフルエンザウイルスは、その遺伝子を1本鎖RNA上に持つため変異が極めて容易です。タイプにはA型、B型、C型と3つありますが、なかでもA型は変異が生じやすいため、パンデミックを引き起こしやすいことが知られています。
このA型インフルエンザウイルスは、HA、NAなど8本のRNAを持ち、すでにHAで16個、NAで9個の大きな変異が見つかっているため、理論的には9 X 16=144種類の亜種が存在します。従ってパンデミック発生時には、迅速にインフルエンザウイルスを同定し、その結果に基づく適切な治療方針の決定が、さらなるパンデミックを防ぐうえで非常に重要と考えられています。
オミックス基盤研究領域は、関西・関東地区の20カ所の医療機関の協力を得て、2009年〜2010年のインフルエンザ陽性の検体を444収集し、それら遺伝子の塩基配列を解析しました。その結果、253検体が2009 pandemic A/H1N1であると同定、このウイルスが多様な遺伝子変異を引き起こしていることを発見しました。これら変異を系統樹に分類したところ、感染初期と感染ピーク時ではその起源が違っていたこと、感染ピーク時には約20個の変異グループが存在し、そのうち12個が国内で新たに発生したこと、タミフル耐性遺伝子変異が1.2%発生したこと、などがわかりました。また、わが国における交通手段の発達を反映して、ウイルス感染が国内で急速に拡大した様子も明らかとなりました。
今後は、迅速・簡易に医療現場で遺伝子解析可能な手法を確立し、感染症対策へ貢献していきます。