4つのケイ素で「ひし形」の新環状化合物を初合成
−正方形の4つのパイ電子はどうなるか?炭素とケイ素の違いを解明−
平成23年3月11日
炭素、窒素、酸素などの原子が中心的な役割を果たす有機化合物では、これらの原子間で二重結合や三重結合などの不飽和結合が安定に形成されています。中でも、芳香族の代表として知られるベンゼンは、炭素原子が6個、水素原子が6個からなる正6角形を形成して安定することが良く知られており、吸入すると毒性がありますが、あらゆる化学工業製品の主要要素となっています。一方、炭素原子が4個からなるシクロブタジエンは、極めて不安定な反芳香族性の分子で、 正方形ではなく、長方形を形成します。この炭素を、元素周期表上同じ14族に属しているケイ素に置換した化合物は、化学結合のメカニズムに迫る知見を与えると期待されており、世界中の研究者がその合成に挑戦してきました。しかし、ケイ素間の不飽和結合が不安定なため、いまだ成功に至っていません。
基幹研究所機能性有機元素化学特別研究ユニットらの研究グループは、4個のケイ素原子でできた新環状化合物「テトラシラシクロブタジエン」の合成に世界で初めて成功し、シクロブタジエンとは異なるひし形を形成することを発見しました。合成には、独自に開発した炭素原子24個と水素原子37個の巨大原子団である、かさ高い置換基「EMimd」を用い、ケイ素原子間の不飽和結合を保護して、成功させました。
シクロブタジエンは、4つのパイ電子が二重結合を作って長方形になります。一方、テトラシラシクロブタジエンは、このパイ電子が2個づつケイ素原子上に局在し、プラスとマイナスに分極したひし形になることを発見しました。今後は、化学結合の本質の探究からシリコン基板界面の制御といった応用まで、幅広く貢献していくと期待されます。