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「超新星爆発の元素合成は想像以上に速い」証拠をつかむ

−18個もの中性子過剰原子核の寿命測定に世界で初めて成功−

平成23年2月1日

図 太陽系の元素存在度および標準的な原子核理論を取り入れた超新星爆発におけるr過程の元素合成分布(理論計算)

原子核は陽子と中性子の固まりで、これらの個数でその性質が決まります。鉄や金など、自然界には安定な原子核が約300個ほど存在していますが、理論的には約10,000個の原子核が存在するとされています。そのほとんどは放射性同位元素(RI)と呼ばれる不安定な原子核です。

「私たちの周りの元素は、どのように創られて、存在しているのか」という謎を解くカギは、鉄より重い質量数(質量数A>70)の特異な幅広のピーク構造で、太陽系が誕生する以前に重元素合成過程(r過程)が起きた痕跡だと考えられています。このr過程の検証は、世界最高性能を持つ理研の「大強度重イオン加速器施設RIビームファクトリー (RIBF)」だけで実現することができます。

図 太陽系の元素存在度および標準的な原子核理論を取り入れた超新星爆発におけるr過程の元素合成分布(理論計算)

仁科加速器研究センターの櫻井RI物理研究室らは、RIBFでクリプトンからテクニチウムまでのRIを発生させ、38個もの中性子過剰なRIの寿命測定に成功し、そのうち18個は世界初のデータでした。 具体的には、345MeVまで加速した238U(ウラン)ビームを9Be(ベリリウム)に照射して、さまざまな中性子過剰なRIを作り出し、独自に開発した高性能な寿命測定装置を用いて、精度良く寿命を測定しました。わずか8時間という測定時間で、世界の過去20年間のデータ量に匹敵するデータを取得し、質量数が110近傍の中性子過剰なRIが、驚くべきことに2〜3倍も速く崩壊することが分かりました。この測定結果は、超新星爆発時のr過程の経路上のRIに初めて実験的に踏み込んだ成果で、これまで謎となっていた理論予想での「重元素生成量の不足問題」へ解決の糸口を見いだしたことになります。