プロ棋士の直観は、尾状核を通る神経回路に導かれる
―プロ・アマ棋士の脳機能画像研究が、直観的思考の神経基盤を明らかに―
平成23年1月21日
相手の王様をとって勝敗を決める将棋やチェスなどのボードゲームでは、論理的な予想の積み重ねや直感的な次の一手の導出という妙技が繰り広げられていきます。この思考過程は、人間だけに高度に発達した思考の仕組みを解明する上で重要と考えられ、古くから研究対象として注目されてきました。特に1950年代には、チェス熟達者や愛好家が、対局中に考えていることを声に出すことで、その思考過程を比較する研究が行われており、熟達者であるほど盤面の記憶能力が優れていること、最善手は直観的に生まれてくること、などが分かってきました。将棋のプロ棋士も、次の一手は「直観的に」頭の中に浮かび、残りの持ち時間は、他の手の確認や心理的な駆け引きなどに費やすとコメントしています。
脳科学総合研究センターの認知機能表現研究チームらは、富士通株式会社、株式会社富士通研究所、社団法人日本将棋連盟の協力を得て、将棋のプロ棋士が戦局を素早く理解し、最適な次の一手を直観的に思いつく神経基盤を実験的に解明しようとしました。プロ棋士やアマチュアがさまざまな盤面を見たときや、詰め将棋(または必至問題)を解くときの脳活動を、機能的核磁気共鳴画像(fMRI)で観察した結果、プロ棋士の脳で特徴的に活動する2つの領域―実戦局面を見て瞬時に駒組を認識する大脳皮質頭頂葉の楔前部(けつぜんぶ)と、最適な次の一手を直観的に導き出す大脳基底核の尾状核―を見いだしました。また、盤面を見て次の一手を直観的に導き出す過程では、楔前部と尾状核が連動して活動することも明らかにしました。
「熟達者固有の直観」という現象の神経基盤を解明した世界で初めての例として注目されます。