明け方の光が春をもたらす
−日長変化に起因する季節性情動障害の治療へ第一歩−
平成22年12月3日
日本に住む私たちは、地球の公転軸の傾きが生みだす自然現象を、季節の変化として楽しんでいます。多くの生物は、この季節変化を日照時間の変化(日長)で感じ取り、体内の生理機能を調節しています。例えば、動物では生殖線の発達や冬眠、渡りが、ヒトでは季節性情動障害や双極性障害、統合失調症などの季節性疾患さえも関与しているとされています。これまで、ウズラを用いた研究により、日長が長くなると下垂体正中隆起部で「春ホルモン」が誘導されることが明らかでしたが、その誘導機構は不明でした。
発生・再生科学総合研究センターシステムバイオロジー研究プロジェクトを中心とする研究グループは、春ホルモンの司令塔となる遺伝子Eya3を同定し、この遺伝子が明け方の光で発現して春ホルモンを誘導することを世界で初めて明らかにしました。研究グループは、ウズラと同様に春ホルモンを誘導するマウスを、長日条件下、短日条件下で数週間飼育し、それぞれの遺伝子発現解析をゲノムワイドで行いました。その結果、各条件下で強く発現する遺伝子を246個、57個の合計303個同定するとともに、春ホルモンの誘導には短日条件下の明け方の光が重要であることを発見しました。この明け方の光ですぐに発現上昇する遺伝子は34個あり、その内の1つEya3が司令塔遺伝子であることを突き止めました。さらにこのEya3は、副司令塔の遺伝子、補佐官の遺伝子と協働して、春ホルモンを一層誘導することが分かりました。発見したEya3は脊椎動物に多く保存されており、日長変化が原因となっている疾患の治療に貢献すると期待されます。