電子の出し入れで硬さが劇的に変わる分子バネを開発
−たった1つの電子放出で分子全体の動きやすさが450倍も変化−
平成22年11月15日
6個の炭素原子が環状につながったベンゼン環は、有機化合物において最も基本的な構成ユニットの一つであり、ベンゼン環をさまざまな形で結合させたものが盛んに研究されてきました。しかし、ベンゼン環を隣り合う炭素の位置で結合させた「オルトフェニレン」は、単純な構造でありながら合成が難しいため、これまでほとんど研究がなされておらず、その性質は未解明でした。
基幹研究所の機能性ソフトマテリアル研究グループらは、ベンゼン環48個を隣なり合った炭素の位置で結合させたオルトフェニレンを世界で初めて合成しました。オルトフェニレンは、3つのベンゼン環が1ピッチのらせんを形成するバネ状の構造をしています。このようなバネ状の構造を持った分子は、さまざまな機能を発揮するため、エレクトロニクスや分子機械への応用の可能性が高まっています。研究グループは、このバネ状分子から電子を1つ取り去るとバネの硬さが劇的に増して、らせんの反転速度が約450分の1も遅くなることを突き止めました。また、この1個の電子の出し入れに応じてバネのピッチが3.263Åから3.224Åと変化しました。
これまで、電子が高密度に含まれた分子バネは、電子を出し入れすることでその振る舞いが変化することが理論上予想されていましたが、このように電子を多量に含む分子バネの合成は難しく、実験的にも証明されていませんでした。「硬さの変化」というこれまで実現することができなかった応答をする分子バネの登場は、応答性分子の分野に新たなコンセプトをもたらすと注目されます。