マウス体細胞クローンの産子出生効率が10倍近くも改善
−X染色体上の遺伝子群発現の正常化が体細胞クローン技術を実用化に導く−
平成22年9月17日
体細胞クローンのヒツジ「ドリー」が、世界で初めて英国で誕生したのは1996年のこと。有用な遺伝子を体細胞からそのままコピーして、均一な体質の動物を無限に生産することが可能になった・・・。基礎研究ばかりか、畜産産業をはじめとするさまざまな分野で期待が広まりました。
ところが、期待に反して体細胞クローンの出生率は低いままで、10年以上たった現在、実験動物の根幹となるモデルマウスの場合でも、核を除いた未受精卵子(除核卵子)へ体細胞核(ドナー核)を移植した胚のうち、数%以下しか生まれてくれません。体細胞クローン技術の発展には大きな壁が存在していました。
バイオリソースセンター遺伝工学基盤技術室らの研究グループは、体細胞クローンマウスを使って、着床前胚(胚盤胞)の遺伝子の発現を網羅的に解析しました。ほ乳類では、雄の細胞には1本、雌の細胞には2本のX染色体が存在し、通常は雌の2本のX染色体のうち1本が不活化され、雌雄のX染色体遺伝子の発現が均等になっています。ところが体細胞クローン胚では、X染色体を不活化するXist遺伝子が異常発現していることを突き止めました。さらに、このXist遺伝子を欠損させて、X染色体上の遺伝子群の発現を正常化させると、常染色体の遺伝子発現量も正常化し、体細胞クローンマウスの産子出生率を10倍近くまで改善させることに成功しました。
X染色体遺伝子の発現量を正常化して体細胞クローンを作出する技術は、基礎研究から畜産、製薬などの応用分野にわたり、実用化が進むと期待されます。