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核酸のように振る舞うタンパク質を明らかに

−翻訳因子EF-Pが転移RNAと同じ反応でアミノ酸を受け取ることを発見−
平成22年8月23日

図 LysRSとGenXの構造

ワトソンと共にDNAの二重らせん構造を発見したクリックは、生物学の基本原理として「セントラルドグマ」を提唱しました。セントラルドグマとは、DNAの遺伝暗号から伝令RNA(mRNA)が合成され(転写)、mRNAの情報に従って、転移RNA(tRNA)が運ぶアミノ酸がタンパク質合成工場(リボソーム)で正しく結合され(翻訳)、タンパク質ができるという流れを表しています。翻訳因子「EF-P」は、tRNAのようなL型構造をとっており、翻訳の際にリボソームに結合することは分かっていましたが、その機能はナゾのままでした。

図 EF-P・GenX複合体とtRNA・aaRS複合体構造の比較

一方、tRNAは、20種類あるアミノ酸の中から自分と対応するアミノ酸を受け取る(アミノアシル化される)必要があり、この反応を触媒するのがアミノアシルtRNA合成酵素(aaRS)です。近年、aaRSと近縁なのにtRNAをアミノアシル化する活性を持たないタンパク質が数多く見つかり、その機能解明が望まれていました。

生命分子システム基盤研究領域と東京大学の研究チームは、aaRSと近縁で大腸菌由来の酵素GenXがEF-Pと結合することを見いだし、EF-P・GenX複合体やGenX単体の立体構造を解析して、 EF-PがGenXによってアミノ酸を受け取る機能を持つことを発見しました。さらに、GenXによるEF-Pへのアミノ酸の受け渡しが、大腸菌などの真正細菌の増殖に欠かせないことも見つけました。

核酸とタンパク質という、まったく異なる分子が、形だけでなく反応までも酷似していることを解明したのは世界で初めてで、生物進化の解明に貢献するだけでなく、 GenXを阻害する低分子化合物が、新規抗菌薬の有望なターゲットになる可能性が示唆されました。