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リンパ球への化学的な糖鎖導入技術でがん認識能力が向上

−高速6π-アザ電子環状反応を活用し、世界で初めて細胞を糖鎖修飾化−
平成22年5月20日

図 糖鎖修飾活性化リンパ球を用いた非侵襲的がんイメージング(TM:がん組織、LN:リンパ節、SP:脾(ひ)臓)

生命を脅かす病気として怖れられているがんの治療法には、摘出手術、化学療法、放射線治療につぐ第4の治療法として、免疫細胞療法が注目されています。免疫細胞療法は、がん組織に集まり細胞障害性を発揮する活性化リンパ球を投与して、がん細胞を死滅させるという治療法です。この治療法では、活性化したリンパ球が、がんの組織に効率的に集まることが重要ですが、現行のリンパ球調製法では、がんを特異的に認識するリンパ球の割合が少なく、病巣の縮小などの治療効果を得にくいという課題を残しています。

この課題を解決するために、リンパ球のがん細胞認識機能を向上させるさまざまな研究が行われていますが、顕著な改善例を見ることができない状況です。

分子イメージング科学研究センターの分子プローブ機能評価研究チームらの研究グループは、高速6π-アザ電子環状反応を活用し、がん細胞の認識機能を向上する複合型N-結合型糖鎖を、生きた細胞の表面に37℃という温和な条件で10〜30分という短時間で簡単に導入することに世界で初めて成功しました。さらに、マウスから取り出したリンパ球を活性化した後、複合型N-結合型糖鎖と蛍光色素Cy5 (蛍光波長、670nm) を導入し、がんのモデルマウスに投与し、生体内蛍光イメージングを行いました。その結果、糖鎖修飾したリンパ球ががん組織に効率的に集積することが明らかになりました。

今回開発した細胞への糖鎖導入技術は、種々ある糖鎖を付加することによって、細胞にさまざまな機能を持たせることを可能にします。免疫細胞療法の治療効果の飛躍的な向上や、がん治療法の新たな評価法の構築に貢献すると期待されます。