ヒトとマウスの系統で転写因子間相互作用マップをそれぞれ構築
−がんなどの疾患メカニズム解明とその治療に向けた基礎データを提供−
生命は、すべての細胞が所有する遺伝子(DNA)から必要な情報をRNAへ“転写”し、その情報を基にRNAからタンパク質へ“翻訳”することで活動を続けています。このように、遺伝情報を起点として、最初のステップである転写を行うタンパク質に「転写因子」が知られています。転写因子は、ゲノム上のプロモーターと呼ばれる部位に結合して、必要な遺伝子を転写しますが、その種類は、ヒトやマウスの場合、それぞれ約2,000種の存在が分かっています。転写因子は、多くの場合、転写因子同士が複合体のタンパク質となり、ダイナミックに機能します。
生命が繰り出す複雑な現象を根本から理解するには、この転写因子同士の相互作用の有無、強弱を掌握することが欠かせません。
理研は、理研オミックス基盤研究領域が主催する「国際FANTOMコンソーシアム」の活動のもと、ヒトとマウスのそれぞれの系統で、転写因子間の相互作用の有無を、すべての可能な組み合わせについて調べ、世界で初めて転写因子間相互作用マップを作成することに成功しました。研究グループは、ゲノムネットワークプロジェクトとマウスエンサイクロペディアプロジェクトで収集した転写因子の完全長cDNAに、哺乳動物ツーハイブリッド法を適用して、ヒト1,222種、マウス1,112種について、2つの因子間の相互作用を総当たり戦で調べました。
その結果、わずか15個の転写因子で構成する相互作用サブネットワークが、生命の発生過程における細胞分化に重要な役割をしていること、新規の転写因子間の相互作用により、血液の単芽球が白血球の一種(単球・マクロファージ)へ分化することを妨げる「負の制御」を引き起こすこと、などが初めて分かりました。獲得したデータは、3月5日からゲノムネットワークプラットフォームで一般に公開します。