酵母プリオンタンパク質のオリゴマー形成過程が感染強度を決定
−オリゴマー内の非天然相互作用が感染性の高いプリオンの凝集体を導く−
認知症や行動異常、不随意運動、人格変化などの病状を伴う神経疾患として知られるプリオン病(伝達性海綿状脳症)は、致死性の病気として知られています。原因としてプリオンタンパク質が、脳内で凝集体(アミロイド)を生成することが分かっていますが、発症メカニズムは不明で、治療法も確立していません。
プリオン病は、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)や狂牛病が種を超えてヒトで発症する新型CJDなどと、人類に脅威をもたらしています。脳科学総合研究センターの田中研究ユニットは放射光科学総合研究センターらとともに、プリオン病の原因とされるプリオンタンパク質のように振る舞う酵母プリオンSup35NMタンパク質が、非天然の相互作用でオリゴマーを形成し、感染性の高いアミロイド構造をとることを世界で初めて発見しました。
研究グループはこれまでに、プリオンタンパク質のアミロイド構造の違いが異なる病状となることを、酵母プリオンを使って解明してきました。しかし、同じプリオンタンパク質からどのように異なるアミロイド構造を作るかはナゾのままでした。酵母プリオンSup35NMを4℃、37℃と異なる温度で凝集させると、4℃では会合してオリゴマーを作り、脆弱で感染性の高いアミロイド構造を、37℃ではオリゴマーを経ずに、感染性が低い硬いアミロイド構造を生成することが分かりました。さらに、4℃下のオリゴマー生成には、プリオンドメインの123個のアミノ酸のうち、アミロイドのコア領域となる1〜35番目のアミノ酸とは別の89〜108番目アミノ酸が最初に会合する“非天然な相互作用”が重要な役割を果たしていることを突き止めました。このオリゴマーを経由するアミロイド生成機構は、プリオン病の新たな治療戦略に大きく貢献するとともに、アミロイドを生成するほかの神経疾患病態解明に新たな道を拓くと期待できます。