プレスリリース 独立行政法人 理化学研究所
慶應義塾大学
「世界を先導する知性の創造」を目指し、慶應義塾大学と包括的に連携
- 理化学研究所と慶應義塾大学が共に理念を掲げ、長期的な展望の下に基本協定を締結 -
平成20年12月10日
◇ポイント◇
  • 理化学研究所と慶應義塾大学は、連携・協力の推進に関する基本協定書を締結
  • 人間知性の解明研究など学部・組織を横断した研究の実施、グローバルな人材育成のハブ機能の構築、資金調達に関する協力などを推進
 21世紀に入り早くも最初の10年が過ぎようとしている今日、前世紀の価値観を揺るがす事柄や、これまで予期し得なかった事象が社会問題化しています。今世紀を見据え、その先の将来を見通し、私たちやその子孫が持続的安定を享受できる社会を形成していくことは、人類に課された大きな課題です。
 現状を踏まえつつもこれにこだわらず、より高い価値の創出に向けて大胆かつ冷静に挑む姿勢こそが、社会のさまざまな問題を克服していく原動力となります。このような気概は、科学研究や学業においても重視されねばなりません。既存の学問領域や体系の枠を超えて自由な発想を尊重する文化を醸成するとともに、これを担う有為な人材を育成し、このような新鮮な知性と創造性の溢れる研究環境と人材を産み出していくことこそが、世界に貢献できる道であると両者は合意し、このたびの連携に至りました。
 慶應義塾大学(塾長 安西祐一郎)は、人文・社会・科学系から理工学系、医学系に至る広範な分野の教育、研究面で、理化学研究所(野依良治理事長)は、物理学、化学から、最近では脳科学、植物学など広範なライフサイエンス分野に至る基礎研究面で、共に日本、世界をリードしてきました。両者は長い伝統の中で、幾多の有為な人材を世に送り出し、世界をリードする数々の優れた研究成果をもって社会に貢献してきました。また、両者は数多くの先端的な共同研究のパートナーとして、優れた実績を残しています。
 このような両者が上述の共感を現実のものとするには、両者の持つ構想力、組織力を組み合わせ、それら能力を最大限に発揮させることが不可欠です。
 各々の組織が有するそれぞれの可能性を持ち寄ることで蓋然性が高められたら(「possibilityからprobabilityへ」)、との思いで両者は共感し、ここに、「世界を先導する知性の創造」を目指し、包括的な連携関係を構築することとしました。


1. 共に掲げる理念
 理化学研究所(以下、理研)と慶應義塾大学(以下、慶應義塾)という、異なった立場で日本を代表する二つの組織が、「世界を先導する知性の創造」を合言葉に、長期的な展望のもとに包括的な連携を行うのは初めてのことです。
 包括的な連携とは、双方の構想力と組織力を活かして、学問領域内の連携を超えて、総合性がもたらす新しい価値を創造することを目指す、奥行きの広い連携を意味しています。二つの組織の違いを互いにわきまえつつ、それを乗り越える相互理解と使命の共有を進め、果てしない知の限界に挑戦します。


2. 連携の柱と主な内容
融合的、革新的な共同研究の実施
(1) 人間知性の解明研究  [資料1]
慶應義塾:医学部、医学研究科、文学部、理工学部、理工学研究科
理研:脳科学総合研究センター
(2) マーモセットのゲノム解析と脳機能イメージング [資料1]
慶應義塾:医学部、医学研究科
理研:脳科学総合研究センター、オミックス基盤研究領域、分子イメージング科学研究センター
(3) ヒューマンマシン・インタフェースの融合研究 [資料1]
慶應義塾:システムデザイン・マネジメント研究科、理工学部、理工学研究科
理研:脳科学総合研究センター
(4) 細胞スケールシミュレーション [資料1]
慶應義塾:医学部、医学研究科、理工学部、理工学研究科
理研:次世代計算科学研究開発プログラム、VCADシステム研究プログラム、 脳科学総合研究センター

※その他の共同研究については、[資料2] を参照。

グローバルな人材の育成
(1) 連携大学院の設置
 両者は、博士課程の学生に我が国最高水準の研究環境と機会を提供します。2008年11月に慶應義塾医学部および医学研究科と理研(脳科学総合研究センター)との間で連携大学院を設置し、順次、ほかの学部、研究科にも範囲を広げ、研究領域を超えた、複数の専門領域を持つ人材を育成することを目指します。
(2) グローバルな人材育成のハブ機能の構築
 理研は、約200の研究機関と約220テーマで、世界中の研究機関と協力関係を構築し、多くの優れた外国人研究者が在籍しています。慶應義塾は、国際交流・連携活動を全学的に推進し、約200の大学・高等教育機関との協定の締結、900名を超える留学生の受け入れ、数々の国際的研究連携など、世界最高水準の教育・研究を展開しています。
 国際化を強力に推進する両者が連携することにより、両者が有するグローバルネットワークを格段に広げ、我が国に国際的人材育成のハブ機能を構築します。そして、既存の人材育成プログラムをフルに活用し、今後の社会の発展に貢献する優秀な若手人材の育成を目指します。
運営基盤の強化
(1) 教育・研究の資金調達に関する協力
 科学研究と人材育成への投資は、人類社会の持続的発展のために不可欠なものです。両者のポテンシャルを十分に活かすには、政府、民間など広くから必要な投資を得て、社会からの付託に応えていく必要があります。
 両者の協力によって実現する、世界を先導するような科学研究と人材育成の計画を、政府、企業、個人に提案し、より多くの方々に理解していただくよう努めるとともに、科学研究と社会との理想的な関係をデザインし、提案していきます。
(2) 事務部門の連携
 両者の強みは、さまざまな専門性を有する事務スタッフによって、教員や研究者の個人あるいはグループの力が組織化され、機動的かつ戦略的に組織運営がなされている点にあります。各々が有する知的財産創出・活用に関するノウハウ、国際化に関する実績などを共有して、さらなる組織力の強化を目指します。
 一方、世界を先導する学術研究機関の効率的運営のためには、改善すべき課題も多く認められます。さらなる発展的組織運営のために共同で事務局のリトリート(研修会)や、人事交流を実施することにより、事務部門の活性化を図ります。


(問い合わせ先)

独立行政法人理化学研究所 永島・伊藤
総務部グローバルリレーション推進室

Tel: 048-467-9260 / Fax: 048-462-4713
慶應義塾大学 研究推進センター 松尾・飯野

Tel: 03-5427-1027 / Fax: 03-5427-1071

(報道担当)

独立行政法人理化学研究所 広報室 報道担当

Tel: 048-467-9272 / Fax: 048-462-4715
Mail: koho@riken.jp
慶應義塾広報室 森口・西片

Tel: 03-5427-1541 / Fax: 03-5441-7640
HP: http://www.keio.ac.jp/


[資料1]

1.人間知性の解明研究
 人間の脳に知性が宿った霊長類進化のメカニズム、その活動によって出現した文明の発展の様式と、それらの関係性によって立つ知的存在としての人類の「来し方行く末」を明らかにする。このため、政治・経済・社会・芸術などを担う 「心」の働き、つまり人間の個と集団の相互作用の生物科学的解明を進め、人間知性の未来を拓く新しい文理融合総合科学の創生を目指す。
慶應義塾:医学部、医学研究科(岡野栄之教授)、文学部(渡辺茂教授)、理工学部、理工学研究科(伊藤公平教授)
理研:脳科学総合研究センター(入來篤史グループディレクター、岡ノ谷一夫チームリーダー

(研究テーマ例)
(1)霊長類脳モデルによる人間知性の進化の生物学的解明
 霊長類の脳にヒト知的脳機能の萌芽を探り、人間知性の進化の要素を解明する。
(2)人間知性の進化の比較動物認知科学的解明
 複数の動物の環境的知性から、人間固有の知性への進化の足跡を解明する。
(3)文明環境が人間脳機能の発現に与える影響の生物学的解明
 構造としての都市環境や機能としての社会環境が、人間の脳と身体の進化に与える影響を生物学的に解明する。
(4)人間に特異的な認知傾向の理解に基づく科学技術文明の構造の解明
 人間の生物学的動作特性に基づいて、社会構造の機能特性を解明し、未来技術を人間の本来の特性に調和した豊かなものにすることを目指す。

2.マーモセットのゲノム解析と脳機能イメージング
 脳の高次機能や脳疾患の分子メカニズムを理解するため、霊長類モデルとして注目されているマーモセットのゲノム解析とデータベースの構築、また脳機能イメージングを行う。
慶應義塾:医学部、医学研究科(岡野栄之教授)
理研:オミックス基盤研究領域(林崎良英領域長)、分子イメージング科学研究センター(尾上浩隆チームリーダー
3.ヒューマンマシン・インタフェースの融合研究
 情報化社会と認知機能解明の進展に伴い、今後、人間生活における新たなヒューマンマシン・インタフェースの重要度が高まる。このため、人と人のコミュニケーション環境、住環境、モビリティー環境における新たなヒューマンマシン・インタフェースを提案するとともに、これらが生活、文化、芸術などの人間活動に与える影響を明らかにする。
慶應義塾:システムデザイン・マネジメント研究科(前野隆司教授、小木哲朗教授、高野研一教授)、理工学部、理工学研究科(今井倫太准教授)
理研:脳科学総合研究センター(入來篤史グループディレクター、谷淳チームリーダー
4.細胞スケールシミュレーション
 細胞内の糖代謝、エネルギー代謝の変化などを実測データに基づき再現するシミュレーションの研究開発を行う*。さらに、肝細胞から肝小葉、肝臓など臓器シミュレーションに向けた挑戦や神経回路シミュレーションとの連携などへの展開を図る。
慶應義塾:医学部、医学研究科(末松誠教授、安井正人教授)、理工学部、理工学研究科(柳川弘志教授)
理研:次世代計算科学研究開発プログラム(姫野龍太郎副プログラムディレクター、横田秀夫チームリーダー)、VCADシステム研究プログラム(安達泰治チームリーダー)、脳科学総合研究センター(深井朋樹グル ープディレクター、臼井支朗チームリーダー、ディースマン マーカスユニットリーダー
(阪大、神戸大、東海大などとも協力して実施。)

*「最先端・高性能汎用スーパーコンピュータの利用開発プロジェクト」の一環として、文部科学省の委託事業として実施中。



[資料2]

包括協定締結により具体化あるいは強化される共同研究

事業名 事業内容 慶應義塾大学 理化学研究所
人間知性の解明研究 自然科学的アプローチを用いた複雑な人間活動の解明 岡野栄之(医学部、医学研究科)、渡辺茂(文学部)、伊藤公平(理工学部、理工学研究科) 入來篤史、岡ノ谷一夫(すべて脳科学総合研究センター)
マーモセットのゲノム解析及び脳機能イメージング マーモセットのゲノム解析や分子イメージングに関する研究 岡野栄之(医学部、医学研究科) 林崎良英(オミックス基盤研究領域)、尾上浩隆(分子イメージング科学研究センター)
ヒューマンマシン・インタフェースの融合研究 高次脳機能計測とこれに基づく脳‐生体‐マシンインタフェース、バーチャルインタフェースの研究開発 前野隆司、小木哲朗、高野研一(すべてシステムデザイン・マネジメント研究科)、今井倫太(理工学部、理工学研究科) 入來篤史、谷淳(すべて脳科学総合研究センター)
細胞スケールシミュレーションの研究開発 「最先端・高性能汎用スーパーコンピューターの開発利用」の一環で行う次世代生命体統合シミュレーションソフトウェアの研究開発(文部科学省委託事業) 末松誠、安井正人(すべて医学部、医学研究科)、柳川弘志 (理工学部、理工学研究科) 姫野龍太郎、横田秀夫(すべて次世代計算科学研究開発プログラム)、安達泰治(VCADシステム研究プログラム)、深井朋樹、臼井支朗(すべて脳科学総合研究センター)ほか
X線自由電子レーザーの利用技術開発 X線自由電子レーザーを用いた一分子構造解析装置の開発、及び触媒の時分割構造解析に関する技術開発 中迫雅由、近藤寛、中嶋敦(すべて理工学部、理工学研究科) 石川哲也(放射光科学総合研究センター)
脳神経科学分野における研究開発 慶應義塾医学部、医学系研究科と理研脳科学総合研究センターとの協力協定に基づく、さまざまな脳神経科学に関する共同研究 柚崎通介、福田恵一、岡野栄之、天谷雅行、佐谷秀行、末松誠、安井正人(すべて医学部、医学研究科) 岡本仁、御子柴克彦、入來篤史、宮脇敦史(すべて脳科学総合研究センター)
メタボローム解析システムの構築に向けた研究 理研と慶應義塾のメタボローム研究に関する基本合意書に基づく、メタボローム解析システムの構築に向けた共同研究 冨田勝(先端生命科学研究所)、末松誠(医学部、医学研究科) 斉藤和季(植物科学研究センター)
ヒトiPS細胞等研究拠点としての研究開発 再生医療の実現化プロジェクト(文部科学省委託事業)」の拠点間連携を通じた幹細胞・再生医学に関する研究 岡野栄之(医学部、医学研究科) 笹井芳樹、高橋政代(全て発生・再生科学総合研究センター)、中村幸夫(バイオリソースセンター)

※その他、多数の共同研究を実施。


調印式の様子
調印式の様子
調印式の様子
(左)野依良治 理研理事長、(右)安西祐一郎 慶応義塾塾長


調印式の様子 調印式の様子
田中啓治 理研BSIセンター長代行 岡野栄之 慶応義塾医学研究科委員長

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