木材の世界的な大害虫として知られるイエシロアリは、日本、中国、米国など世界各国の木造建築物に打撃を与え続けています。その被害額は、日本では年間数100億円、米国では1,000億円以上とされています。その破壊的な木質分解能力は、腸内に共生する微生物群の力によるものです。しかし、それらの微生物群は大部分が培養することができず、詳細な共生メカニズムは謎のままでした。
基幹研究所前田バイオ工学研究室環境分子分解科学研究チームは、これらのシロアリの驚異の多重共生メカニズムの解明に挑戦しています。研究チームは、横浜研究所生命情報基盤部門らとともに、イエシロアリの木材消化の最も重要な役割を果している原生生物の細胞内だけに生育している細菌「CfPt1-2」のゲノムの完全解読に成功しました。
その結果、この細菌が、原生生物の木質分解の産物をエネルギー源として空気中の窒素を吸収し、さらに原生生物の窒素老廃物をリサイクルして、さまざまなアミノ酸やビタミンを合成していることがわかりました。これによって、強固で栄養分の偏った木材のみを餌としながらも、窒素分の欠乏に陥ることなく、イエシロアリは驚異的な増殖力を発揮できるというわけです。イエシロアリ・原生生物・細菌の多重共生機構の解明によって、木質からのバイオ燃料の開発や新しい害虫駆除法の開発に貢献すると期待されます。
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