脳は、見る、聞く、嗅ぐ、味あう、触れるという五感ばかりか、走る、歩く、学ぶ、創造するなど、私たちの日ごろの行動そのものをつかさどっています。テーブルに置いてあるコーヒーを飲む、という何気なく日常的に行なっている行動を考えてみましょう。脳はこの日常的な行動を、運動パーツ(運動プリミティブ)とその柔軟な組み合わせ、という機能的な階層によって実現しています。具体的には、カップに手を伸ばす、持ち上げる、口元に持ってくるという一連の運動のパーツとそのパーツの組み合わせで成り立っているとされています。従来は、脳における低次のモジュールが運動パーツを、高次のモジュールがパーツの組み合わせを担う、という空間的な階層のメカニズムによって行動が実現していると考えられていました。
脳科学総合研究センターの動的認知行動研究チームは、この空間的な階層に代わり、神経活動の時間スケール(活動がゆっくり変化するニューロンと速く変化するニューロン)が行動生成における機能的な階層を実現させる、という多時間スケールモデルを提案しました。さらに、このモデルを組み込んだヒューマノイドロボット(実験には上半身の10関節のみを使用)が、学習により自己組織化したニューロンの機能的な階層に従って、複雑な行動パターンを正確にスムーズに動作することを確認しました。さらに、運動パーツの組み合わせを変化させることで、新しい行動パターンを生成させることにも成功しました。
このモデルを発展させることで介護ロボットなど実社会で活躍することができる、高度なロボット開発に貢献できると考えています。
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