物事を考え、記憶し、運動と感覚を制御する脳の高次機能の「最高中枢」として、大脳皮質が知られています。その機能異常は、アルツハイマー病、てんかん、知能障害、運動障害、精神病などをはじめとする重篤な脳障害を引き起こします。
成人の大脳皮質は複雑な6層構造を構成しますが、胎児では4層からなっています。発生・再生科学総合研究センターの細胞分化・器官発生研究グループは、マウスとヒトのES細胞から、この大脳皮質組織を生体に近い立体構造で産生することに世界で初めて成功しました。
研究グループはこれまでに、マウスやヒトのES細胞から中枢神経系の神経細胞などを試験管内で分化させることに成功してきましたが、神経細胞が整然と集合して機能する「神経組織」を産生できていませんでした。そこで、すでに開発していた無血清浮遊培養法を改良した新たな培養法「SFEBq法」を考案し、ES細胞から従来の倍となる7割の効率で大脳皮質前駆細胞の分化誘導を可能にしました。この前駆細胞を3次元で浮遊培養し続けると、大脳皮質特有の層構造を形成しました。ヒトのES細胞から分化させた大脳皮質特有の組織は、ヒト胎児の大脳皮質とよく似た4層構造を自己組織化的に形成し、神経活動を自発的に行なう生理機能を持つことを確かめました。また、シグナル因子を加えることで、大脳皮質組織を領域ごとに選択的に分化誘導することも見いだしました。
この成功で、組織を使った次世代の再生医療や創薬開発などが大きく前進すると期待されます。
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