私たちは経験的に、歳をとると物忘れしやすくなることを知っています。脳が老化すると、脳の嗅内野で過剰にリン酸化されたタウタンパク質が蓄積することが観察されていますが、加齢に伴う記憶障害が具体的にどのようなメカニズムで起こるのかは謎のままでした。
脳科学総合研究センターのアルツハイマー病研究チームは、このタウタンパク質をリン酸化する酵素の1つである「GSK-3β」の活性化が、記憶を呼び起こし、それを再び固定化するプロセス(記憶の再固定化)に必須であることを発見しました。研究チームはこれまでに、過剰にリン酸化されたタウタンパク質が嗅内野で蓄積すると、加齢性の記憶傷害を引き起こすことを報告しています。この過剰リン酸化タウタンパク質の蓄積の仕組みを明らかにするため、蓄積に関与しているGSK-3βの正常脳での役割を調べました。
GSK-3βの遺伝子を半分に減らしたノックアウトマウスは、学習の途中で一度記憶を呼び起こすと、記憶喪失を起こすことがわかりました。すなわち、GSK-3βの活性化が、呼び起こした記憶の保持に必須の役割を果たすことが明らかとなりました。新たに記憶する(学習)時には、GSK-3βの活性は下がることから、加齢と共に知識が増え、過去の記憶に頼った変わり映えのない生活を送っていると、自然と記憶の再固定化のプロセスが頻繁に活性化されるようになり、老化による記憶障害を引き起こすと考えられます。
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