記憶や学習などわたしたち高等生物に必要不可欠な高次機能は脳によって実現されています。脳は、神経回路で知られるニューロン、脳構造の維持をつかさどるグリア細胞および血管で構成されています。この脳細胞の半数以上を占めているのがグリア細胞で、その中でも最も多いのがアストロサイトという星状の細胞です。
グリア細胞は、脳構造の維持とともに脳内の代謝などを維持する支持細胞と考えられてきましたが、アストロサイトは神経伝達の主役であるニューロンと同様に、グルタミン酸など種々の神経伝達物質を放出して、神経活動を調節することが分かってきました。このアストロサイトに特異的に発現するカルシウム結合タンパク質が「S100B」です。
S100Bは、てんかん患者の脳脊髄液で濃度が高くなる現象が見られていましたが、その機能は不明なままでした。
理研脳科学研究センター回路機能メカニズムコア神経回路メカニズム研究グループ平瀬研究ユニットらはこの現象に着目し、S100Bと脳の神経活動の関係を調べました。その結果、神経活動の上昇に伴って放出されるグルタミン酸に、アストロサイトが反応しS100Bを分泌、このS100Bが、アストロサイトからニューロンへのシグナル伝達物資として働く、というシグナル経路が脳内の神経活動を調整することを発見しました。
S100Bの高濃度化は、てんかんとともにアルツハイマーの患者の脳脊髄液でも見られることが知られており、これらの神経疾患の予防や治療薬開発に貢献すると期待されます。
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