高年齢化社会を迎え、認知症に対する対策が社会的な課題となっています。国内では、認知症老人が約100万人を超え、その約半分はアルツハイマー病患者とされています。その数はさらに増え続けると予想され、早期の治療薬の開発が待たれています。
アルツハイマー病は、アミロイドベータ(Aβ)と呼ばれるペプチドが過剰に生産されて蓄積し、老人斑を形成することが原因とされ、徐々に進行して記憶障害を引き起こします。 Aβは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)が、ベータ(β)セクレアーゼ(BACE1)とガンマ(γ)セクレターゼと呼ばれる2種類の酵素によって切断されることで産生されますが、この切断反応は、細胞膜の特殊領域「膜マイクロドメイン」で行われます。
脳科学総合研究センターの構造神経病理研究チームは、この膜マイクロドメインを、生体内での状態を維持したまま単離できる手法を開発し、APPとBACE1が異なる膜マイクロドメインに存在することを見いだしました。さらに、神経細胞が亢進すると、Aβ生産に関与することが知られる酵素Cdk5が、APPをBACEの膜マイクロドメインへ移行させ(マイクロドメインスイッチング)、切断反応を開始することを発見しました。
BACE1によるβ切断は、Aβの生産を調節する重要なメカニズムであり、今回発見したマイクロドメインスイッチングをさらに解析することにより、新たな治療薬の開発につながると期待されます。
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