熱を加えると物が伸び、冷やすと縮む現象は、鉄道のレールなどで目にすることができます。ところが、この基本的な性質とは異なり、熱による体積の膨張(熱膨張率)がほとんどゼロになる「インバー」と呼ばれる物質が、1896年にスイスの物理学者シャルル・エドワード・ギヨム(1920年にノーベル物理学賞受賞)によって発見されています。精密機械ではわずかな誤差も許されないため、熱膨張率ゼロの材料開発が盛んとなっています。
さらに、「熱を加えると縮む」というマイナスの熱膨張率を示す素材として、タングステン酸ジルコニウムが見つかり、1996年には記録的な負熱膨張率を達成しています。負熱膨張の素材を混ぜ合わせれば、熱で物質の大きさが狂う現象を、まったくなくしてしまうことが可能となります。
佐賀大学理工学部、産総研 生産計測技術研究センター、理研 放射光科学総合研究センターの研究グループは、磁気を帯びる物質の1つとして広く活用されている酸化銅「CuO」の結晶サイズを、ナノメートル以下の極小粒子にすると、熱膨張率が逆転し、負の熱膨張率−1.1×10−4/℃という値を持つことを発見しました。今回、その環境は−100 ℃以下に限られたものですが、 負熱膨張率は、これまでよく知られていたタングステン酸ジルコニウムよりも4倍も大きい値です。
研究グループは、同じ磁性体の2フッ化マンガンも、ナノサイズの粒子にすると負熱膨張を示すことも発見し、この現象に普遍性があることを見出しました。磁気と結晶格子の相互作用が、ナノ粒子の負熱膨張を作り出すメカニズムだと考えられます。今後は、さらに負熱膨張の物質探索を続け、ナノマシンなどを可能にする材料開発を目指します。
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