精神不安や体の不調を訴える人には、生体内でリズムを刻んでいる体内時計の働きが狂っていることが原因となっている場合が多くあります。ヒトをはじめとする哺乳類のゲノム上には、体内時計によって発現が制御される遺伝子が数百個もあることや、朝・昼・夜に遺伝子の発現をスイッチのように切り替える3種類の制御DNA配列が、体内時計の制御に中心的な役割を担っていることなどが知られてきています。しかし、これら3種類の制御DNA配列の作用を受けている遺伝子は、一部しか明らかではありませんでした。近年、生物のゲノム配列の解読が進み、複数の生物種のゲノム配列の比較ができ、哺乳類の間で共通に存在する配列を網羅的に解析することが可能となりました。
発生・再生科学総合研究センターシステムバイオロジー研究チームは、インテックシステム研究所らとともに、ヒトとマウスのゲノムにある朝・昼・夜のスイッチとなる体内時計の制御DNA配列を網羅的に解析し、データベース化することに成功しました。また、生命現象の新たな解析手法であるシステムバイオロジーを駆使したデータベースを活用し、このスイッチの役割を果たす制御DNA配列を、コンピューターを使って人工的に作成することにも成功しました。さらに、朝・昼・夜のスイッチが、転写制御因子によってどのように制御されているかも明らかにしました。
ゲノム上にある体内時計に制御されるスイッチが網羅できたことで、体内時計による遺伝子制御機構の理解が急速に進むと考えられます。今後、体内時計とさまざまな疾患との関係を解明し、薬が効く時間、副作用が起こる時間の予測などへ応用することが期待できます。
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