| ※1 |
高度好熱菌サーマス・サーモフィラス HB8株 |
| 静岡県伊豆半島にある峰温泉から発見された、85℃という極限環境で生育できる細菌(バクテリア)。熱水中で生きている細菌(好熱菌)は全生物の共通祖先に近い位置にあり、原始生命の基本的特徴が凝縮されているといわれている。好熱菌1匹に起こる生命現象を理解することは、ヒトを含めたあらゆる生物の基本を解明し、「生命とは何か」という本質的な疑問を問い直すことにつながるとも考えられている。 |
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| ※2 |
高度好熱菌丸ごと一匹プロジェクト |
高度好熱菌サーマス・サーモフィラスHB8株を地球上のあらゆる生物の代表(モデル生物)とし、DNA、タンパク質、糖質、脂質、そのほか低分子の構造と機能に基づいて、1つの細胞におけるあらゆる生命現象をシステム全体として理解する学問基盤の構築を目指すプロジェクト。このプロジェクトは以下の4段階で進行すると想定しており、SPring-8においてはイメージングに関連した研究を行う。
| 第1段階: | タンパク質など細胞を構成する分子の、1つの細胞全体の立体構造解析 |
| 第2段階: | タンパク質など細胞を構成する分子の、1つの細胞全体の機能解析 |
| 第3段階: | 細胞内のそれぞれのシステム(複数分子のネットワーク関係)の解析 |
| 第4段階: | 細胞全体のシミュレーション |
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| ※3 |
大型放射光施設SPring-8(スプリングエイト) |
| 理研が所有する、兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高の大型放射光施設。SPring-8の名前はSuper Photon ring-8GeVに由来する。放射光(シンクロトロン放射)とは、電子を光とほぼ等しい速度まで加速し、電磁石によって進行方向を曲げたときに発生する、細く強力な電磁波のことである。SPring-8では、遠赤外から可視光線、軟X線を経て硬X線に至る幅広い波長域で放射光を得ることができるため、原子核の研究からナノテクノロジー、バイオテクノロジー、産業利用や科学捜査まで幅広い研究が行われている。SPring-8は日本の先端科学・技術を支える高度先端科学施設として、日本国内外の大学・研究所・企業から年間1万4,000人以上の研究者が利用している。 |
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| ※4 |
サブミクロンオーダーの細胞イメージング技術 |
| 細菌などの原核生物にも利用可能なイメージング技術。真核細胞は10〜100μm前後の大きさをもつため、波長数百nmの光を利用する蛍光法が利用可能である。しかし細胞の大きさが数μmしかない細菌では、蛍光法では非常に粗いモザイク状にしか可視化できないため、蛍光法のイメージングはあまり行われていない。そのため、波長がはるかに短いX線を利用したイメージングの技術を細菌に応用することを試みている。 |
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| ※5 |
セントラルドグマ |
| ワトソンと共にDNAの2重らせん構造を発見したクリックにより提唱された生命の基本的な原則。遺伝情報が記憶されているDNAがRNAへ転写された後、細胞小器官であるリボソームにて翻訳されてタンパク質が合成される一連の流れのこと。 |
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| ※6 |
グローバル転写因子 |
| 数多くの遺伝子の発現を調節している転写因子。代表的なものとして、cyclic AMP receptor protein(CRP)/ fumarate and nitrate reduction regulator(FNR)ファミリーが知られる。 |
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| ※7 |
cAMP |
| 細胞内でのエネルギー伝達体であるATPから合成される。種々の外界情報を細胞内の標的分子に伝える細胞内シグナル伝達のセカンドメッセンジャーとして働き、多くのタンパク質リン酸化酵素を活性化するほか、糖や脂質の分解などの多くの生物学的過程をコントロールする。 |
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| ※8 |
DNAマイクロアレイ |
| スライドガラスやシリコンの基盤上に、数万から数十万個の遺伝子の断片を固定し、それらの遺伝子断片と、調べたい細胞から調製したmRNAの相補DNA(cDNA)との結合を解析することによって、遺伝子の発現を調べる方法。数万から数十万個の遺伝子の発現を同時に調べることが可能であるため、細胞内のすべての遺伝子の発現を調べるなど、網羅的解析を行う際に威力を発揮する。 |
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| ※9 |
オペロン |
| 1つのプロモーターの制御下に複数の遺伝子が遺伝子群として連なり、1つの転写単位を形成しているもの。 |
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遺伝子名 |
遺伝子の種類 |
解説・考察 |
| 1 |
TTHA0769 |
タンパク質分解酵素 (アミノ酸配列から推測) |
細菌からヒトまで、幅広い生物種に存在する、トリプシン様のタンパク質分解酵素だと思われる。本酵素ファミリーのタンパク質は、栄養飢餓の条件では、アミノ酸を補給するためにタンパク質を分解しており、タンパク質の品質管理を行っている。 |
| 2 |
TTHA0770 |
タンパク質分解酵素 (プロテアーゼ・ロン) |
細菌からヒトまで、幅広い生物種に存在している。細菌の場合、栄養飢餓の条件では、アミノ酸を補給するためにタンパク質を分解する。タンパク質の有効期限を調節しており、古くなり変性したタンパク質や、不要となったタンパク質を分解する。 |
| 3 |
TTHA0425 |
酸化還元酵素「NADH オキシダーゼ」 |
補酵素NADHをNAD+に酸化する。NADHの酸化還元反応は生体エネルギーの産生に関係している。 |
| 4 |
TTHA0570 |
Glucose/Sorbosone 脱水素酵素(アミノ酸配列から推測) |
NAD+を補酵素として糖を代謝し、エネルギーの産生に関与していると考えられる。TTHA0425タンパク質と共役している可能性がある。 |
| 5 |
TTHA0986 |
酸化還元酵素「チオレドキシン」 (アミノ酸配列から推測) |
チオレドキシンは、多くの生物種に存在し、S-S(ジスルフィド)結合を持つ種々の酵素の酸化還元を通して、その活性を調節する。定常期の細菌の細胞内ではDNAやタンパク質が酸化的ストレスにより損傷を受けることが知られているが、チオレドキシンは、生体内で発生した1重項酸素(1O2)やヒドロキシルラジカル(・OH)などの活性酸素種を消去する抗酸化物質として働く。 |
| 6 |
TTHA1028 |
酸化還元酵素 「ロダネーゼ」(立体構造から推測) |
ロダネーゼは、過酸化水素を還元して無毒化するチオレドキシンオキシダーゼ活性を持つ。 |
| 7 |
TTHA0634 |
マグネシウムキラターゼ (アミノ酸配列から推測) |
細菌からヒトまで幅広い生物種に存在し、タンパク質にマグネシウムを配位させる酵素である。本遺伝子と同一オペロン上にあるTTHA0636遺伝子にコードされているタンパク質が金属を配位するモチーフを持つことから、TTHA0636にマグネシウムを配位する酵素であると推察できる。 |
| 8 |
TTHA0635 |
ヌクレオチド転位酵素 (アミノ酸配列から推測) |
ヌクレオチドを付加する酵素である。本酵素群の1つであるポリA ポリメラーゼは定常期においてmRNAの3’末端にポリAを付加することで、mRNAの分解を促進する。 |
| 9 |
TTHA0636 |
ヌクレオチド転位酵素 (立体構造から推測) |
TTHA0635タンパク質と複合体を形成すると考えられる。金属配位モチーフを持つ。 |
| 10 |
TTHA0637 |
未知 |
同一オペロン上の遺伝子にコードされているヌクレオチド転位酵素様タンパク質と関連した機能を持っていると推察できる。 |
| 11 |
TTHA0638 |
未知 |
同一オペロン上の遺伝子にコードされているヌクレオチド転位酵素様タンパク質と関連した機能を持っていると推察できる。 |
| 12 |
TTHA0654 |
未知 |
鉄−硫黄クラスターの代謝に関与している可能性のある領域を持つ。活性中心に鉄−硫黄クラスターを持つタンパク質には、酸化還元反応に関与しているものもある。 |
| 13 |
TTHA0655 |
転写因子 (アミノ酸配列から推測) |
現在、本転写因子の標的遺伝子を探索中である。 |
| 14 |
TTHA0337 |
未知 |
本研究結果から、細胞の危機的状況から回避するために機能している新規タンパク質と推察できる。 |