人をはじめとする哺乳類は、共通する祖先から生まれたと考えられています。しかし、哺乳類は、種によって見た目の違いばかりか、能力にも大きな違いがあります。この違いを、異種哺乳類は、それぞれどのように進化させて獲得してきたのでしょうか?種の多彩な能力を創造する中枢は脳です。中でも、さまざまな情報を処理し、記憶するためには大脳皮質が欠かせません。大脳皮質には、入力される情報ごとに領域が分けられた「脳地図」が存在し、種特異的な能力を生み出していると考えられています。
大脳皮質が情報を正しく処理・記憶するためには、情報移送の中継点である視床にも「視床の脳地図」が存在して、正しく情報を整理していると考えられます。しかし、視床は脳内の深部に位置するため、解析や遺伝子操作が難しく、その地図の作成メカニズムはわかっていませんでした。
理研脳科学総合研究センター下郡研究ユニットは、マウスの胎児の脳内のさまざまな場所で発現し、脳の形作りに重要な働きをする繊維芽細胞増殖因子(FGF8)の視床での様子を観察、この因子の活性を調節して視床の脳地図を変化させること成功しました。
生命の根幹を揺るがす脳の進化にはまだまだ多くの謎が残っていて、種ごとに異なる脳を持つようになった仕組みの全容解明にはほど遠い状況です。今回の、脳の深部にある、視床という部位の発生の一端となるメカニズムの解明は、さらにその接続先である大脳皮質の理解を深めることになります。種ごとに違う視床の脳地図の解明が、さらに、脳全体の進化への理解を獲得することになります。
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