わが国の人口の少子高齢化にともない、社会保障費の負担も増加の一途をたどっています。特に医療の分野では、3大死因のトップであるがんや生活習慣病の罹患者数の増大が懸念されており、早期診断・治療法の確立や創薬プロセスの革新による医療費の削減、さらにはQOL向上の実現が急務として望まれています。近年脚光を浴びている分子イメージングは、疾患にかかわる遺伝子・タンパク質などの分子レベルの情報を可視化することが可能で、医療問題を革新的に解決する突破口となることが期待され、わが国や欧米諸国でも国家的に分子イメージング研究が推進されています。
理研分子イメージング研究プログラムの研究グループは、核医学における分子イメージングをさらに発展させた、複数分子同時イメージングの重要性を世界に先駆けて提唱してきました。がんやさまざまな生活習慣病などの疾病には、複数の要因が複合的に関与していることが明らかになっており、複数の分子の情報を同時に取得することで、より高度で正確な診断が可能になると考えられます。しかし、現在すでに医療の現場で活躍しているポジトロン断層撮影(PET)は単一の波長(エネルギー)のγ線のみを利用するため、複数分子の同時イメージングには適していません。一方、理研仁科加速器研究センターの研究グループは、マルチトレーサー技術の研究開発で、複数のエネルギーのγ線を同時に撮像可能な装置の開発に成功していました。そこで、両研究グループは共同で「複数分子同時イメージング装置: GREI」の研究開発を推進し、今回、健常なマウスに同時投与した3種類の放射性薬剤の挙動を2次元および3次元的に画像化し、リアルタイムイメージングの可能性を高めることにも世界で初めて成功しました。
現在研究グループでは、撮像装置の高度化開発と新薬の研究開発が並行して進められており、近い将来に複数分子同時イメージング法が創薬や診断法の革新に寄与することが期待されています。
|