植物の耐病性の複雑な制御メカニズムを解明
- 病原菌と環境ストレスに対抗する複雑な生存戦略が存在 -
PRESS RELEASE HIGHLIGHT
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図 ストレスに対する植物ホルモンシグナルのネットワーク  植物は、生育環境の変動や病原菌の感染、昆虫や草食動物による食害など常にさまざまなストレスにさらされています。これらのストレスに打ち勝つために、植物は個々のストレスに対する独自の自己防御機構を発達させてきました。環境の変動(乾燥・低温・高塩濃度など)を感知するとアブシジン酸(ABA)を、病原菌に感染するとサリチル酸(SA)を、虫の食害などを受けるとジャスモン酸(JA)を生合成し、これらの環境ストレスに耐えるためのタンパク質の合成などを行います。このように、防御機構を発動するためには、植物ホルモンと呼ばれる低分子化合物がシグナル伝達物質として重要な役割を果たします。
 植物は一度病原菌に感染すると、次の感染に備えて全身で病害耐性機構を発動するという防御機構を持っています。その1つである全身獲得抵抗性「SAR」は、サリチル酸の生合成を介して誘導されます。このSARは薬剤で人工的に誘導することが可能であり、実際に農業において病害予防剤として利用されています。しかし、冷害時などにはSAR誘導剤の効果が十分に発揮されないことから、環境要因が抵抗性誘導に何らかの影響を及ぼしているのではないかと推察されていました。
 理研基幹研究所仲下植物獲得免疫研究ユニットを中心とした研究グループでは、SAR誘導シグナルがアブシジン酸シグナルにより抑制されることを明らかにしました。環境ストレスにさらされた植物は、病害抵抗性の誘導が起きにくく、逆に耐病性が誘導された植物では、環境ストレスに弱くなる傾向を見いだしました。これは、植物が複数のストレスにさらされたとき、緊急性のあるストレスに対して優先的に適応し、ほかのストレス耐性機構を抑制することを示しています。これは、固定生活を営み周辺環境に適応していかなければならない植物が持つ、より効率的にストレスに対応していくための生存戦略と考えられます。今後、植物の免疫力を効果的に利用する環境調和型の病害防除システムが確立できると期待されます。
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