今日我々は、二酸化炭素の過剰排出による地球温暖化や、化石燃料資源の枯渇など、さまざまな環境問題に直面しています。その解決策の1つとして、クリーンで枯渇の心配のない、太陽光をエネルギーとして利用する技術の開発に関心が寄せられています。なかでも、低コスト化・軽量化・大面積化が期待できる有機薄膜太陽電池に注目が集まっており、世界中の研究者が、その実現と高効率化に向けてしのぎを削っています。有機薄膜太陽電池において、光電変換効率を向上させるためのポイントの一つとして、いかにして2種類の分子(電子供与体と受容体)が相分離した状態で、お互いの接触面積を広くとる事ができるか、という点が挙げられます。
このようなナノ相分離構造を実現する目的で、今回、「分子プログラミングによる電子ナノ空間の創成と応用」プロジェクトを推進している科学技術振興機構の研究グループは、有機半導体材料に対し、生体膜分子に見られるような親水性と疎水性(両親媒性)の導入を試みました。すなわち電子供与体であるオリゴチオフェン部位に疎水性の鎖を、電子受容体であるフラーレン部位に親水性の鎖を導入し、それらが連結した分子を設計・合成しました。理研放射光科学総合研究センターの研究グループらは、分子の詳細な配列構造について調べるため、大型放射光施設SPring-8を用いた小角X線散乱測定および解析を行いました。その結果、両親媒性の導入により、各分子部位が明確に相分離した構造が実現していることを明らかにしました。さらには、両親媒性の導入により、両親媒性を導入しない場合と比較して約10倍大きな光導電性を取り出すことに成功しました。
このように、両親媒性をモチーフにした新たな分子設計によって、今後、より優れた太陽電池の材料開発が進むと期待されます。
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