生物の発生は、精子と卵子が受精することから始まります。その発生の過程でさまざまな器官が形成され、体が形作られていきます。体は、「上皮性」と「間充織性」に大別される2種類の細胞で構成されています。上皮性の細胞は、円筒状で細胞同士が規則的に隙間なく接着し、基底膜と呼ぶ細胞外の組織の上にシート状に並んでいます。一方、間充織細胞は、不規則な形態をして、自由に移動することができる運動性を持っています。
発生時の器官形成では、個々の細胞が増殖、遊走、凝縮を繰り返して、形態を変えながら器官を作っていきます。この過程で、細胞が「上皮性」から「間充織性」へと形態を変化させる現象を「上皮‐間充織転換:EMT」と呼び、この制御がうまくいかないと器官形成の不具合をもたらします。興味深いことに、EMT現象は上皮性がんの浸潤や転移にかかわります。EMTは、体の形作りの根源ともいうべき現象ですが、その詳細な仕組みは謎となっていました。
理研発生・再生科学総合研究センターの初期発生研究チームは、 EMTの典型的な例として知られている原腸陥入(胚葉を形成する過程)に着目し、細胞の形態変化が、細胞内情報伝達タンパク質「RhoA」と細胞骨格タンパク質の「微小管」に制御されることを、発生初期のニワトリ胚を使った実験で突き止めました。EMTを制御する分子機構が明らかとなり、がんの転移を制御する機構の解明などに貢献すると期待されます。
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