100億個以上の神経細胞で構成され、複雑で大量の情報を処理する私たちの大脳は、神経細胞間の接点であるシナプスという特別な場所で情報のやり取り(神経伝達)を行なっています。1個の神経細胞は、約1万個の神経細胞とシナプスでつながることが可能です。
私たちの脳が記憶・学習するとき、信号が反復したり、異なる複数の情報信号が同時に1つの神経細胞に入ることで、特定の神経伝達だけが強化されます。記憶・学習が長期にわたって保持されるためには、この強化された信号が引き起こすシナプス後部の構造変化が、特定のシナプスでだけ維持される必要があります。
ところが、このシナプス後部の構造変化の詳細な分子メカニズムはほとんどわかっていません。
理研脳科学総合研究センターの発生神経生物研究チームは、科学技術振興機構のカルシウム振動プロジェクトの研究チームと協力し、シナプス後部に豊富に存在するアダプター分子の「Homer(ホーマー)」に着目、分子メカニズムの解明を行ないました。
その結果、 Homerタンパク質が神経活動に依存してリン酸化され、それによってHomerを介した複合体が消失することを発見しました。Homerリン酸化がシナプス後部の構造を柔軟化し、神経伝達を調節する役割を担っていることを突き止めました。記憶・学習を支えるシナプス後部の分子構造変化を包括的に理解する世界的な成果として注目されます。
|