リン酸化はタンパク質の機能を調節する代表的な制御機構であり、植物を含めた多くの生物種で広範囲の生命現象の制御に関わっています。あらゆる生命現象をタンパク質レベルで理解するためには、個々のタンパク質のリン酸化制御の有無、さらにリン酸化制御を受ける場合のリン酸化部位の情報は、非常に重要で直接的な手掛かりとなります。
モデル植物のシロイヌナズナでは、ゲノム解析によりヒトの約2倍にあたる1,000以上ものタンパク質のリン酸化を担う酵素が存在することが明らかにされました。その数の多さから、植物でのリン酸化制御の大切さが伺い知れますが、植物細胞内で実際にリン酸化による制御を受けているタンパク質およびタンパク質上のリン酸化部位の情報は非常に限られていました。
慶應義塾大学先端生命学研究所と理研植物科学研究センター植物免疫研究グループは共同で、リン酸化されたタンパク質の精製・濃縮法の改良を行い、液体クロマトグラフィー/ハイブリッド型イオントラップ−オービトラップ質量分析計を用いて、シロイヌナズナの細胞粗抽出液からの2,000以上のリン酸化部位の同定に成功しました。今回明らかにしたリン酸化部位の数は、植物ではこれまでで最大規模であり、同定したリン酸化部位情報は、慶應大先端生命研のデータベース(ペップベース)および理研のデータベース(オミックブラウズ)にて公開されています。今回の成果は、植物の様々な生命現象を理解する過程において非常に有用な情報資源となり、有益な植物資源の開発推進に大きく貢献するものと期待されます。
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