ビックバンから始まった宇宙には、そのとき生まれた「物質」と「反物質」が同じ量だけ漂っているはずです。ところが、不思議なことに、広い宇宙には「物質」ばかりが漂っているように見えます。
理研基幹研究所山崎原子物理研究室は、東大大学院総合文化研究科の研究グループと協力し、反物質のモデル系となっている反水素原子を実験室で作り出し、この不思議を解明する研究に挑んできました。具体的には、作り出した反水素原子を捕捉して、その性質を詳細に観察し、水素原子との違いを明らかにする研究です。
この研究のため、研究グループは、まず2.5テスラの高磁場の極高真空中に反水素の“原料”となる反陽子を大量にため込み、よたよたの状態の反陽子の雲を作りました。この反陽子の雲は、クーロン反発力やローレンツ力などから、独楽のように回転します。
この反陽子雲の回転を電場を加えて加速すると、反陽子雲が圧縮されることを見いだしました。さらに、この圧縮で、エネルギーがそろった超低速エネルギーのよたよた反陽子ビームが生成でき、さまざまな原子に衝突させると何がどのように起こるか、詳細に観察することが可能になります。
反物質研究の鍵となる反水素の“原材料”を制御することができるようになると、不思議の解明が大きく前進することになると、多くの研究者の注目を集めています。
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