骨・関節の疾患の中で最も発症頻度が高く、生涯罹患率が80%にも達する「椎間板ヘルニア(腰椎間板ヘルニア)」は、国民的な病気の1つといえます。加齢とともに発症リスクが高まり、高齢者の日常生活を脅かします。腰痛、坐骨神経痛に加え、下肢の筋力低下・感覚障害をまねき、悪化すると尿閉、便の失禁を引き起こします。
わが国では少なく見積もっても100万人以上の人が罹患していると見られます。痛みは日常的な動きを妨げ、生活のリズムを狂わし、労働意欲を阻害するため、患者個人ばかりか社会にとっても大きな損害となります。
しかし、多くの人々を苦しめている椎間板ヘルニアの発症には、遺伝的要因が関与することがわかってきたものの、そのメカニズムはいまだに明らかになっていません。
理研ゲノム医科学研究センター骨関節疾患研究チームは、慶応大学整形外科らと協力し、椎間板ヘルニアの原因がTHBS2 、MMP9の2つの遺伝子の、たった1つの塩基が変異することによることを突き止めました。 これまでに、THBS2 遺伝子が椎間板ヘルニアに発現することやTHBS2タンパク質の異常が脊椎の変形を起こすことが知られていました。
そこで、研究チームは、日本人を対象に遺伝子多型を使って相関解析を行ないました。その結果、THBS2に1塩基変異(多型)を持つと、持たない人に比べて約1.4倍もかかりやすくなることがわかりました。さらに、MMP9遺伝子でも同様の結果となることを見いだしました。この2つの遺伝子に多型を持つ日本人は、約3倍も椎間板ヘルニアにかかりやすいことがわかりました。
この2つの遺伝子の役割をさらに詳しく解明することで、椎間板ヘルニアの分子病態の解明が可能となり、画期的な治療薬開発を望むことができます。
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