プレスリリース 独立行政法人 理化学研究所
米国国立衛生研究所
理研CGMと米国NIHが国際薬理遺伝学研究連合を創設
- オーダーメイド医療の実現に向け、個人ごとの最適な投薬法の確立へ -
平成20年4月15日
 独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)ゲノム医科学研究センター(CGM:中村祐輔センター長)と米国国立衛生研究所(NIH:エリアス・ザホーニ所長)薬理遺伝学研究ネットワーク(PGRN:スコット・ワイス議長)、NIHの3研究機関(国立一般医学研究所〔NIGMS〕、国立がん研究所〔NCI〕、国立心臓・肺・血液研究所〔NHLBI〕)は、2008年4月14日(日本時間4月15日)、米国癌学会 (AACR:サンディエゴ)の場において、薬剤の有効性や副作用と個人の遺伝的要因との関係を明らかにするため国際薬理遺伝学研究連合(Global Alliance for Pharmacogenomics:GAP)の創設に関し合意、中村センター長、ワイス議長および上記3研究機関の所長が合意書に署名しました。
 理研CGMは、2008年4月1日、理研遺伝子多型研究センター(SRC)を改称し、SRCで取り組んできたヒトゲノムの多様性を示すSNP(Single Nucleotide Polymorphism:一塩基多型)を解析することで、遺伝子レベルで個人の体質の違いを把握し、個人の特性に合った診断・治療・予防や薬剤の投与が可能となるオーダーメイド医療の実現を目指した研究を、引き続き行っています。
 米国NIHにおける研究グループの連合体であるPGRNは、NIH所属の3研究機関が協力し、体内における薬剤の作用や薬物動態と個人ごとの遺伝子の相違との関係について研究を行っています。
 今回創設するGAPでは、CGM、PGRN双方の研究能力・資源を有効に活用し、共同研究やフォーラムの開催等を通じた連携・協力を行うこととしており、共同研究の第1弾として、遺伝的要因の乳がん治療剤への影響の研究等5件の共同研究を開始します。
 GAPの創設により、薬剤の有効性や副作用に係る遺伝的要因の究明が加速し、その知見が臨床薬物治療に活用されることで、個々の患者の体質に適合した最適な薬剤の投与による国際的なヘルスケアの実現につながることが期待されます。


1. 背景
 理研ゲノム医科学研究センター(CGM、2008年4月1日に遺伝子多型研究センターを改称)では、ヒトゲノムの多様性を示すSNPを解析し、遺伝子レベルで個人の体質の違いを把握し、個人の特性に合った病気の診断・治療・予防や薬剤の投与が可能となる「個人の遺伝情報に応じた医療」(オーダーメイド医療)の実現を目指した研究を行っています。これまでに、高精度・大規模なSNP解析を行うことができるSNPタイピングシステムを構築し、その解析能力を活かして、体質の差を生じる遺伝情報の違いが染色体上のどこにあるかを示す「地図」をつくる「国際ハップマッププロジェクト」(2002年〜2005年)に参加しました。プロジェクトでは、単独機関としては世界最大(全データの約25%)のデータ解析を行い、SNP情報についての世界的な標準化に貢献してきました。さらに、大規模なSNP解析を行うとともに、臨床現場で利用可能な簡便で高精度なSNP解析機器の開発を行っています。また、心筋梗塞などの生活習慣病の発症や重症化に関連する遺伝子(疾患関連遺伝子)の研究や個人ごとの遺伝子の相違と薬剤への応答性の関係などについても研究を重ねています。
 一方、米国NIHの研究グループの連合体であるPGRNは、体内における薬剤の作用や薬物動態と個人ごとの遺伝子の相違との関係について研究を行い、その研究成果を臨床に応用することを目的としています。
 このように、日米両国において、個人ごとの遺伝子の相違と薬物の治療効果や薬物のもたらす副作用との関係を明らかにする研究が進展している現状に鑑み、この分野における新たな発見につながる共同研究を促進し、オーダーメイド医療確立に貢献するため、CGM、PGRN及びNIHの3研究機関(NIGMS, NCI, NHLBI)は、「国際薬理遺伝学研究連合」(Global Alliance for Pharmacogenomics:以下GAP)を創設することといたしました。


2. GAP創設における合意内容
 合意書の概要は、以下のとおりです。具体的な内容については、ホームページに掲載しています(英文のみ)。
(なお、上記ホームページには米国側におけるプレスリリース内容も掲載しています。)
(1) GAP創設の目的
1 治療薬物の有効性や副作用に係る遺伝的要因の発見を促進すること
2 研究での知見を臨床薬物治療へ適用することを促進すること
3 付属書で定められた5件の共同研究の実施
(2) GAPで実施する共同研究(5件)の内容
1 遺伝的要因の乳がん治療薬の有効性に対する影響に関する研究
2 早期乳がんに対する抗がん剤(2種類)治療薬の最適投与期間に関する研究
3 膵がんに対する抗がん剤治療がもたらす重篤な副作用に関係する遺伝的要因に関する研究
4 心臓突然死につながる薬剤誘発性不整脈と遺伝的要因との関係に関する研究
5 国際ワルファリンコンソーシアムとの協働による、患者の遺伝情報に基づく血液凝固防止剤ワルファリンの初期投与量の調整に関する研究
(3) 運営委員会の創設
 共同研究の進捗状況の評価、新規共同研究の提案、研究結果の公表方法の検討、知的財産権にまつわる事項の検討、研究連合の加盟者拡大などの事項を検討するため、CGM、PGRN代表者らで構成される運営委員会を開催する。


3. 今後の期待
 GAPの創設により、薬剤の有効性や副作用に係る遺伝的要因の究明が加速します。その知見を臨床薬物治療に活用することで、個々の患者の体質に適合した最適な薬剤の投与による国際的なヘルスケアの実現につながることが期待されます。


4. 各機関概要
(1) ゲノム医科学研究センター(Center for Genomic Medicine: CGM)
2000年に遺伝子多型研究センターとして設立されて以来、ヒトゲノムの多様性を示すSNPを解析し、遺伝子レベルで個人の体質の違いを把握し、個人の特性に合った病気の診断・治療・予防や薬剤の投与が可能となるオーダーメイド医療の実現を目指した研究を行っている。2008年4月にゲノム医科学研究センターに改称し、新たなスタートをきった。
(2) 米国国立衛生研究所(National Institutes of Health: NIH)
1887年に設立された合衆国で最も古い医学研究の拠点機関。米国保健社会福祉省(United States Department of Health and Human Services:HHS)傘下にあって、27の研究所やセンターから構成される、基礎から臨床までの広範囲な医学研究を実施又は資金援助する機関。
(3) 薬理遺伝学研究ネットワーク(Pharmacogenetics Research Network: PGRN)
NIH所属の3研究機関(国立一般医学研究所、国立がん研究所、国立心臓・肺・血液研究所)が関与する研究グループの連合体。体内における薬剤の作用や薬物動態と個人ごとの遺伝子の相違との関係について研究を行い、その研究成果を臨床に応用することを目的としている。PGRNの研究者は米国とカナダの研究機関から指名される。
(4) 国立一般医学研究所(National Institute of General Medical Sciences: NIGMS)
米国メリーランド州ベゼスタにあるNIHの一機関で、学術・医療研究機関の基礎医科学研究プログラムに資金提供を行うために設立された機関。PGRNの運営面と資金面について責任を負う。
(5) 国立がん研究所(National Cancer Institute: NCI)
NIHの一機関で、がんの原因究明、診断、予防、治療、がん患者及びその家族のケア、がんからのリハビリテーションなどに関する研究、人材育成、情報提供を実施し、又はこれらの活動を行う機関への資金援助を行う機関。
(6) 国立心臓・肺・血液研究所(National Heart, Lung, and Blood Institute: NHLBI)
NIHの一機関。心肺や血液の疾患、睡眠障害(睡眠時無呼吸症候群など)に関する原因究明、診断、予防、治療、研究、人材育成、情報提供、普及啓発活動を実施し、又はこれらの活動を行う機関への資金援助を行う機関。


(問い合わせ先)

独立行政法人理化学研究所
 ゲノム医科学研究センター
  センター長
   中村 祐輔(なかむら ゆうすけ)

Tel: 03-5449-5372 / Fax: 03-5449-5433
 横浜研究推進部 企画課
  次長兼企画課長事務取扱
   岡本 拓也(おかもと たくや)

Tel: 045-503-9328 / Fax: 045-503-9113

(報道担当)

独立行政法人理化学研究所 広報室 報道担当

Tel: 048-467-9272 / Fax: 048-462-4715
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