1872年、米国ロングアイランドのジョージ・ハンチントン医師が「遺伝的な舞踏病」を報告したことから名が付いた神経病「ハンチントン病」は、付随意運動や認知症、精神障害などを引き起こす難病です。遺伝子解析が進み、この病気の原因が、第4染色体に局在している遺伝子のDNAの一部の核酸の塩基配列の異常にあることがわかっています。原因遺伝子では、シトシン=C、アデニン=A、グアニン=Gの3つの塩基配列の繰り返しが、普通では20回程度のところ、40回以上も繰り返され伸長しています。C・A・Gの3つの塩基でコードされる物質は、アミノ酸の一種のグルタミンで、繰り返し発現するとグルタミン鎖となり、ポリグルタミンを大量に生産することとなります。このポリグルタミンが蓄積すると、発症することから、ハンチントン病や脊髄小脳変性症などは、まとめて「ポリグルタミン病」と呼ばれます。
理研脳科学総合研究センター構造神経病理研究チームは、ポリグルタミンの蓄積した凝集体に結合するタンパク質の中から、遺伝子発現の調節を行う転写因子「NF-Y」が強く結合し、正常に働く「NF-Y」が少なくなっていることを突き止めました。さらに、「NF-Y」が減ると、タンパク質を正しく折りたたむタンパク質「シャペロン」のHSP70の発現が低下し、病気をさらに進行することを突き止めました。
これらの成果は、転写因子「NF-Y」を制御することでハンチントン病の病気進行を遅らせる新しい治療法の可能性を示し、ポリグルタミン病の予防にも役立つものと期待されます。
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