エレクトロニクスを支える半導体や高温超伝導体など、電子の働きから有用な機能を生み出す新物質の発見によって、私たちの生活はさらに豊かさが増しています。これまで、その電子の働きを観る方法として、X線回折データから電子の分布を可視化する実験解析手法が使われてきました。ところが、この手法では、物質の機能発現に直接関わっている電子のみならず、直接関わっていない電子の情報もすべて混在したまま可視化してしまいます。
理研放射光科学総合研究センターの高田構造科学研究室は、筑波大学、島根大学と協力し、物質の機能・性質をつかさどっている電子を、選択的に可視化することに成功しました。研究グループは、2005年に開発した、X線回折データから静電ポテンシャルを求めることができる画期的な解析手法を活用し、電子同士の相互作用が強いマンガン酸化物に適用しました。このマンガン酸化物は、マイナス115℃で性質が金属から絶縁体に転移し、絶縁状態に磁場を加えると電気抵抗率が1万分の1に減少する巨大磁気抵抗(GMR)効果を示します。解析の結果、マイナス255℃では、価数がプラス3価とプラス4価に相当する2種類の静電ポテンシャルをもつマンガンが規則正しく整列して存在するため、マンガン周りの電子が動き回れず、電気を通さない絶縁体状態を示すことがわかりました。
今後、この手法によって、電荷の移動や化学反応の様子なども実験的に可視化することが可能となり、高機能材料の開発に大きく貢献すると注目されます。
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