目、耳、鼻などがとらえた感覚情報、学んで吸収した知識情報など、膨大な情報が脳内の神経回路で正しく処理されています。この神経回路は、神経細胞が軸索と呼ぶ突起を伸ばし、誘導因子や反撥因子の影響を受けながら相手を見つけシナプス結合を作り、形成されます。その後、必要な結合は強化し、不要な結合は刈り込んで、回路が成熟していくと考えられています。
この神経回路網には、神経細胞を興奮させる興奮性シナプスと、逆に興奮を抑える抑制性シナプスがあり、興奮性シナプスはグルタミン酸、抑制性シナプスはガンマアミノ酪酸(GABA)が主要な神経伝達物質として働き、情報を正しく伝えています。ところがこのGABAが、出生直後の乳児期の脳では興奮を起こすため、発達期の脳で何が興奮を抑えているのかわかっていませんでした。
理研脳科学総合研究センター津本研究ユニットは群馬大学と共同で、脳内マリファナ類似物質「内因性カンナビノイド」が、発達期の脳で興奮性神経伝達を抑制する働きがあることを発見しました。発達期の脳では、抑制性シナプスの生育が遅れており、成熟脳で抑制に働くGABAも逆に神経細胞の興奮を引き起こすため、抑制能力がなく熱性けいれんなどの過剰興奮を起こしやすいとされています。今回、発達が未熟な脳で、抑制機能が強化されるまでの間、 「内因性カンナビノイド」が機能するメカニズムを明らかにしたことにより、脳の正常発達の理解に役立つだけでなく、発達障害の解明や治療法に欠かせない知見をもたらすことになりました。
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