プレスリリース 独立行政法人 理化学研究所
ジェフリー・モデル基金
「理研ジェフリー・モデル原発性免疫不全症診断・研究センター」開所
- 原発性免疫不全症の原因遺伝子同定および病態形成機序の解明を加速 -
平成20年1月15日
 独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)免疫・アレルギー科学総合研究センター(以下RCAI、谷口克センター長)は、国立大学法人富山大学(西頭コ三学長)など全国13大学と財団法人かずさDNA研究所(大石道夫理事長)と共に、米国のNPOであるJeffrey Modell Foundation(JMF:ジェフリー・モデル基金)の支援を得て、「理研ジェフリー・モデル原発性免疫不全症診断・研究センター※1」を1月15日に設立し、原発性免疫不全症の原因遺伝子同定、および病態形成機序の解明など、総合的な基礎研究を展開します。
 理研RCAIでは、2006年に原発性免疫不全症の臨床研究を専門とする厚生労働省の研究班のネットワークに属する研究機関のうち13大学、かずさDNA研究所と共同研究契約を結び、原発性免疫不全症患者などのDNAを受け入れ、遺伝子構造解析を実施し、解析結果などのデータベースの構築を行っています。この研究体制が評価され、竹森利忠RCAIコーディネーター(グループディレクター兼務)をセンター長とした理研ジェフリー・モデル原発性免疫不全症診断・研究センター(RIKEN Jeffrey Modell Diagnostic and Research Center for Primary Immunodeficiencies)を設立することになりました。
 ジェフリー・モデル原発性免疫不全症診断・研究センターを、わが国に初めて開設することは、免疫研究のCOEとしての役割を担っているRCAIの研究力と共に、原発性免疫不全症の診断治療を専門とする国内組織の総力を結集させ、将来的に原発性免疫不全症疾患の迅速な診断および適切な治療法の早期選択を可能とすることから、患者のQuality of Lifeの向上に直結すると考えられます。また本センターが、その他のジェフリー・モデル原発性免疫不全症診断・研究センターと協力することで、疾患の根治治療に向けた基礎研究の発展を促し、ヒト免疫系の発達の理解を深め、学術的に重要な拠点となることが期待されます。


1. 背景
 理研免疫・アレルギー科学総合研究センター(以下RCAI)は、厚生労働省の難治性疾患克服研究事業「原発性免疫不全症候群に関する調査研究」における調査研究班※2(以下、「厚労省調査研究班」、班長:宮脇利男富山大学医学部長)に所属する全国13大学と連携し、匿名化※3された患者の原因遺伝子の確定と免疫学的解析を、かずさDNA研究所の協力の下に進めています(2007年8月9日お知らせ)。これまで、対応する臨床側情報と基礎的解析データを統合した、診断・治療のための総合データベースを構築し、専門家へ提供するシステムを確立してきました。また、病態発症と治療効果を予測するデータベース構築のため、この分野で優れた業績を有するインド・バンガロールにあるバイオインフォマティクス研究所(アキーレシュ・パンディー所長)スジャータ・モーハン博士が、RCAIユニットリーダーとして参加し、協同作業を行っています。さらに、このプラットフォームで、ヒト化マウス技術を用いてヒト原発性免疫不全を再現するモデルマウスの開発に成功し、このシステムを用いた発症機序と病態の解明、および根治治療のための基盤研究を展開してきています。


2. 原発性免疫不全症の現状
 先天性遺伝性疾患である原発性免疫不全症は、日本で約1万人(血液系疾患調査研究班がまとめた原発性免疫不全症候群の報告による)存在すると見込まれています。この疾患は、先天性の遺伝的な異常で免疫機能が働かず、細菌、ウイルス、真菌などの外来病原体に感染しやすくなり、若年での悪性腫瘍や自己免疫疾患、アレルギーの合併も見られる重篤な疾患です。現在までに120以上の原因遺伝子が明らかにされていますが、いまだに原因が解明されていない病型も多数あります。
 原因遺伝子が解明されたものは、造血幹細胞移植や遺伝子治療などの治療も行われ、疾患の治癒も得られていますが、診断の遅延のため、重篤な感染症に罹患し致死的となる例も多数、生じています。特に、原因遺伝子が明らかにされていない場合には、診断および十分な治療法が確立されている状況となっていません。
 日本国内では、原発性免疫不全症の症例が散在しており、これらの臨床情報、原因遺伝子の構造解析結果などを集積したデータベースも存在しなかったことから、原因遺伝子の同定に至るのが困難です。


3. 「理研ジェフリー・モデル原発性免疫不全症診断・研究センター」開所について
 世界での原発性免疫不全発症予防、診断治療の促進を目的として1987年に設立されたアメリカのNPOであるJeffrey Modell Foundation(JMF)から極めて高い評価を得て、共同で、診断研究および臨床データプラットフォーム構築事業を展開することになりました。RCAIとかずさDNA研究所に加えて、全国13大学と協力し、わが国初の「ジェフリー・モデル原発性免疫不全症診断・研究センター」を開設することは、基礎免疫学に貢献するだけでなく、原発性免疫不全症疾患の迅速な診断及びより適切な治療法の選択にも大きく役立つものと期待されます。
 開所にあたっては、JMF創設者のFred and Vicki Modell(フレッド・モデル、ビッキー・モデル)夫妻、支援企業であるCSLベーリング社Peter Turner(ピーター・ターナー)社長、つばさの会(原発性免疫不全症候群患者と家族の会)が参加し、発足記念式典を開催します。
 理研ジェフリー・モデル原発性免疫不全症診断・研究センターは、まずは3年計画で原発性免疫不全症のデータベース構築を行います。所在地は、理研RCAI内で、スタッフは当面7人を予定しています。全国から集まる原発性免疫不全症臨床データの登録と、DNAやRNA解析をはじめとする免疫学的診断解析と病態発症研究を実施し、総合データベースの構築を行います。これらをもとに、各大学と共同して、新しい診断法、治療法の開発など、患者に還元できる研究を進めます。


 
4. 各社概要
(1)Jeffrey Modell Foundation(JMF)
フレッドとビッキー・モデル夫妻が、原発性免疫不全症が原因の肺炎により15歳で亡くなった息子のジェフリーを記念して、設立した。この基金は、原発性免疫不全症の早期の的確な診断、効果的な治療法、根本的な治療法を確立することを目指している。わが国に今回設置したセンターを含め現在、世界中に36のジェフリー・モデル原発性免疫不全症関連のセンターが設立されている。所在地は米国・ニューヨーク。1987年設立。フレッドとビッキー・モデル夫妻が理事長を務めている。

(2)CSLベーリング社
JMFの主要なスポンサー。血液中の血漿成分に含まれるタンパク質を抽出、精製して作られる血漿分画製剤のグローバル・リーダー。会社の歴史は、第1回ノーベル生理学・医学賞を受賞した独国のエミール・フォン・ベーリング博士によって1904年に設立された、ベーリングベルケ社にさかのぼる。本社所在地は、米国・ペンシルバニア州。ピーター・ターナー社長。

(3)財団法人 かずさディー・エヌ・エー研究所
1991年に設立された研究所で、遺伝物質の本体であるDNAの構造の解析研究、DNAの構造の解析技術に関する研究、DNAの機能およびその応用に関する研究、ならびにDNAに関するデータなどの蓄積・提供などを行うことにより、新しい産業分野の創出や産業構造の高度化、科学技術の振興を促し、人類の福祉に貢献することを目的としている。所在地は千葉県木更津市。大石道夫理事長。

(4)つばさの会(原発性免疫不全症候群患者と家族の会)
一人の患者の母親が、「同病の友と語り合いたい」と新聞で呼びかけたのをきっかけに、1991年11月に「原発性免疫不全症患者と家族の会」としてスタート。
お互いが支え合い、力を合わせて、原発性免疫不全症候群の理解を社会に訴え、治療・研究体制、社会保障制度の充実と向上を目指すことを目的に、活動を続けている。所在地は愛知県名古屋市。代表者、永井敬子。



(問い合わせ先)

独立行政法人理化学研究所
 免疫・アレルギー科学総合研究センター
  コーディネーター・グループディレクター
   竹森 利忠(たけもり としただ)
Tel: 045-503-7005 / Fax: 045-503-7053

横浜研究推進部 企画課

Tel: 045-503-9117 / Fax: 045-503-9113

(報道担当)

独立行政法人理化学研究所 広報室 報道担当
Tel: 048-467-9272 / Fax: 048-462-4715
Mail: koho@riken.jp


<補足説明>
※1 ジェフリー・モデル原発性免疫不全症診断・研究センター
世界中、36ヶ所に設置している。下記地図の★が、ジェフリー・モデル原発性免疫不全症関連のセンター。
全センターの一覧は下記URLからご覧いただけます。 http://www.info4pi.org/referralcenter/index.cfm?section=referralcenter&content=jmfcenters&CFID=25683978&CFTOKEN=40555336
※2 厚生労働省の難治性疾患克服研究事業「原発性免疫不全症候群に関する調査研究」における調査研究班
国立大学法人富山大学宮脇利男医学部長が、班長を務めている。現在、研究調査班のうち、以下の13大学がRCAIとかずさDNA研究所を加えた共同研究プロジェクトに参加している。
宮崎大学・岐阜大学・名古屋大学・九州大学・広島大学・金沢大学・富山大学・東京医科歯科大学・東北大学・北海道大学・京都大学・信州大学・防衛医科大学校
※3 匿名化
個人に関連する情報から、姓名、住所、電話番号、病院患者IDなど個人の特定に結び付く情報をすべて除去したもの。



左から、谷口克RCAIセンター長(理研)、野依良治理事長(理研)、
フレッドとビッキー・モデル夫妻(JMF理事長)。


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