生命の設計図であるDNAが、細胞の中で増えたらどうなるのでしょうか? その答えは、増えたDNAの量を反映して細胞が大きくなり、大きくなった細胞で構成されている動・植物は、当然のように大きくなります。実際に、この現象を利用して、薬剤処理によって染色体のセット数を人工的に増やすことで、ジャガイモ、バナナや切り花などの品種改良が行われています。
しかし、なぜDNA量が2倍、3倍と増えると細胞や動・植物そのものが大きくなるのか、その仕組みは謎でした。
理研植物科学研究センターの細胞機能研究ユニットは、作物の品種改良などに利用している薬剤処理による染色体のセット数を人為的に増やす手法と違って、自然現象で発生する「核内倍加」メカニズムは、染色体のセット数は増えないまま、既存の染色体の束が太くなるようにDNA量を増やしていることを発見しました。この核内倍加には、DNAの二重らせんがもつれないように解く「DNAトポイソメラーゼY」と呼ぶ特殊な酵素複合体が必須であることも解明しました。さらに、細胞の核に含まれるDNAの量に比例して、細胞のサイズが大きくなり、植物体も大きくなっていることを、実際に計測して、確認しました。
これらの結果は、モデル植物であるシロイヌナズナを使って確かめたものですが、核内倍加が作物を大きくする有力な手法となることを初めて明らかにしたもので、大きな期待が持てます。また、この核内倍加の手法を用いて、人為的な薬剤処理では不可能だった、果物の実や園芸用の花だけを大きくするなど、個別のターゲットを狙うことができるようになるかもしれません。
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