柿やみかん、りんごをはじめとする果実は、受粉で実を結び、食生活を豊かにしてくれます。その花粉の成熟から受精までの過程は、環境ストレスにとても敏感です。北海道・東北地方では、冷害により花粉が成熟せずに稔実率が下がり、深刻な被害をもたらします。
花粉を作ることができない雄性不稔形質は、環境ストレスに強い作物の開発に道をつけるだけでなく、遺伝子組み換え作物の拡散を防いだり、ハイブリッド種子を作るために自家受粉を防いだりと、様々な目的で応用される重要な形質です。
理研植物科学研究センターの機能開発研究チームは、米国ペンシルバニア州立大学などと協力し、モデル植物であるシロイヌナズナで、花粉成熟の初期司令塔として機能するマスター遺伝子「MS1」を発見しました。発見した遺伝子は、花粉母細胞の減数分裂後に花粉成熟過程が異常となる変異体から、すでに単離していた遺伝子です。
研究チームは、このMS1遺伝子を改変し、花粉ができない雄性不稔のシロイヌナズナを生み出すことに成功しました。さらに、 MS1遺伝子が花粉壁の形成に関わる遺伝子群を制御していることを突き止めました。
花粉成熟機構が解明できれば、花粉を作ることができない作物や、寒さ暑さに強い作物の開発に大きく貢献すると期待されます。
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